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2018年05月01日
YGLPCメールマガジン第54号(2018年4月27日発行)
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弁護士法人淀屋橋・山上合同
★ YGLPCメールマガジン第54号 ★
~ 債権法改正が金融実務に与える影響
その他2記事~
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今号の目次
1.債権法改正が金融実務に与える影響
2.地理的表示の保護について~ゴルゴンゾーラチーズはどこに消える?~
3.最高裁判例速報(H29.12.14判決)~不動産を対象とする商事留置権の成否(積極)~
過去のバックナンバー
https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html
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【債権法改正が金融実務に与える影響】
改正民法の施行が平成32年4月1日に迫っています。
今回のコラムでは,改正民法のうち,金融実務に影響が大きいと思われる点をいくつか挙げてみたいと思います。
1.保証人の保護強化に関する規定の創設
- 主たる債務者の委託を受けた保証人に対する主たる債務に関する情報の提供が債権者の義務として規定され,また,主たる債務者について期限の利益が喪失したときは,債権者はその事実を保証人に通知しなければならなくなりました。
- 事業に係る債務の根保証を委託する場合には,主たる債務者は主債務者に係る情報を提供しなければならず,仮にこの情報を提供せず,又は異なる説明をしたために保証人が誤認して保証契約を締結した場合,債権者が主たる債務者の情報提供義務違反について悪意又は重過失があれば,保証契約の取消し事由となります。
- 事業に係る債務について経営者以外の第三者である自然人を保証人にする場合,一定の場合を除いて,保証契約の締結日前の1か月以内に公正証書の作成が必要となりました。
2.法定利率の引き下げ
- 従来5%とされていた民法上の法定利率が3%に引き下げられ,かつ,3年を1期として,市中の金利変動に合わせて,法定利率が変動する仕組みが導入されました。
- これに伴い,6%とされていた商事法定利率は廃止され,民法上の法定利率と統一されることとなりました。
3.債権譲渡における預貯金の取扱い
- 改正民法により,債権について譲渡制限を行った場合でも,債権譲渡の効力は妨げられないという整理が行われましたが,預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権が「預貯金債権」と定義され,預貯金債権については,譲渡制限の意思表示について悪意又は重過失である譲受人に対し,譲渡制限の意思表示をそのまま対抗できると整理されています。
4.定型約款の関する規律の創設
- 現行民法には定型約款に関する規定がありませんでしたが,改正民法では,定型約款について,その定義,効力要件,内容に関する規制,内容の表示義務,約款変更に係る規律について,規定が設けられています。
下記のコラムでは,上記の内容を詳細に解説しておりますので,是非ご覧ください。
https://www.yglpc.com/wp/column/201804_1348/
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 水井 大
TEL: 06-6202-8537
E-mail: dai-mizui@yglpc.com
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【地理的表示の保護について~ゴルゴンゾーラチーズはどこに消える?~】
平成27年6月に施行された「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(通称GI法)につき,昨年7月に日本とEUとの間で大枠合意された経済連携協定に基づき,本年2月,同法第23条1項に係る指定産品が最終的に決定され,その内容が公表されました。
その中には,「ゴルゴンゾーラ」や「パルミジャーノレッジャーノ」などお馴染みの産品が含まれており,EUとの間の経済連携協定が発効されれば,これら指定産品については,GI法第23条1項・3条により,各指定産品の産地・品質基準・生産方法等を示す文書(明細書)に沿わない商品には,これらの表示を付すことができなくなります。
この規制に反した場合には,農林水産大臣から措置命令を受ける可能性があり(GI法第5条),措置命令に反した場合には,五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処される可能性がありますので(GI法第39条),上記のようなEU産品に関する名称を商品に付する場合には注意が必要です。
もっとも,例外的に,上記指定産品に関する地理的表示又はこれに類似する表示を付することが許可されている場合が,GI法第3条2項但書各号に列挙されています。
特に,GI法第3条2項5号を受けて,GI法施行規則第3条3号において,「登録に係る特定農林水産物等の名称に普通名称が含まれる場合において,当該特定農林水産物等の名称の一部となっている普通名称の表示を付するとき」が挙げられており,その具体例として,平成30年3月2日に農林水産省が公表した「日EU・EPAにおける地理的表示(GI)の取扱いについて(説明資料)」(以下「本件説明資料」といいます。)には,「普通名称」と認識されている語として,「ブリー」「カマンベール」「モッツアレラ」等が挙げられており,これら商品については,真正品との誤認混同を生じない限り,GI法違反とはならないとされています。
他方で,本件説明資料において,「普通名称」として認識されている名称は限定列挙されており,例えば,「ゴルゴンゾーラ」等については本件説明資料上「普通名称」とみなされていないため,「北海道産ゴルゴンゾーラ」といった表記は,GI法違反となる可能性があることから,やはりEU産品に関する名称を商品に付する際には,本件説明資料の十分な確認が必要です。
また,平成30年3月28日には,「地理的表示産品情報発信サイト」(https://gi-act.maff.go.jp/) が開設され,国内においても,地理的表示取得への動きが高まるものと思われますが,先行登録商標がある場合には,地理的表示を登録できない(GI法第13条2項)など商標制度との関係で,様々な規制がありますので,地理的表示の活用を御検討の際はぜひ一度ご相談下さい。
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 玉置 菜々子
TEL: 06-6202-7552
E-mail: nanako-tamaoki@yglpc.com
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【最高裁判例速報(H29.12.14判決)~不動産を対象とする商事留置権の成否(積極)~】
商法第521条が規定する「商人間の留置権」の目的物に不動産が含まれるか否かについては従来議論のあるところでしたが,最高裁平成29年12月19日判決は,最高裁として初めて,商人間の留置権の目的物には不動産も含まれるとの判断を示しました。
事案は,土地の賃借を受けていた運送業者に対し,賃貸人が賃貸借契約の終了に基づき土地の明渡を求めたのに対し,賃借人である運送業者が,賃貸人との間で締結された運送委託契約に基づく運送委託料債権を被担保債権として商事留置権を主張し,土地の明渡しを拒んだという事案です。
最高裁は,要旨,以下の理由により,運送業者の留置権の主張を認め,賃貸人の上告を棄却しました。
商事留置権の目的物には不動産も含まれるという考え方が従来も多数を占めていたように思われますが,この問題について,最高裁が正面からこの問題を取り上げ,これを肯定したことにより,この解釈問題については,決着をみたと考えられます。
なお,商事留置権の成否が争われる場面として建物建築の請負人が建物について商事留置権を主張するという場面がありますが,この場合,請負人の不動産に対する占有の取得が争点になることが多く,本判例は,このような請負人による商事留置権の主張の場面とは異なりますので,留意が必要です。
また,商事留置権は,破産手続及び民事再生手続においては別除権として扱われ,会社更生手続においては更生担保権者として扱われるなど,一般の債権とは異なる地位を与えられます。本判決は,倒産手続における商事留置権の取扱いについても,影響を与えるものと思われます。
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 金 大燁
TEL: 06-6202-7718
E-mail: d-kin@yglpc.com
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