トピックス
2015年10月05日
YGLPCメールマガジン第39号(2015年10月5日発行)
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弁護士法人淀屋橋・山上合同
★ YGLPCメールマガジン第39号 ★
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今号の目次
1.欧州特許関係のライセンス契約時の留意点(1)
留意点の概要、及びEU競争法のセーフハーバーについて
2.注意が必要なのはマイナンバーだけではありません
個人情報保護法の改正
3.YGLPC連続セミナー
〜債権法改正について〜 第4回 開催のお知らせ
過去のバックナンバー
https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html
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【欧州特許関係のライセンス契約時の留意点(1)】
〜留意点の概要、及びEU競争法のセーフハーバーについて〜
日本企業が保有する欧州特許について、日本企業が欧州企業と特許
ライセンス契約を結ぶ際に、欧州特許ライセンス契約ならではの重要
な留意点があります。
日本企業側からすれば、特許ライセンス契約における準拠法を日本
にするかどうかという点は一つの大きな関心事になると思いますが、
実は仮に日本法を準拠法にしていたとしても(もっと言えばどの国の
法律を準拠法にしていたとしても)、このことは選択された準拠法以
外の外国法の適用を完全に排除することにはならないのです。
どういうことかを具体的に言いますと、例えば、欧州特許ライセン
ス契約では、欧州市場が不適切な影響を受けることを防止するために、
準拠法に関わらずEU競争法が強制的に適用される場合があります。
更に、特許権侵害訴訟提起地として最も人気の高いドイツで提訴す
る場合には、ドイツ法(財産法、倒産法)が強制的に適用される場合
があります。
したがって、日本企業が欧州企業と欧州特許ライセンス契約をする
場合には、準拠法に関わらず、欧州独自の法律および実務について十
分に留意しないと、せっかくライセンス契約を締結してもその契約内
容が法的に実現されないリスクを負うことになるのです。
まず、EU競争法で言えば、ライセンス契約の内容が「セーフハー
バー」(規則No 316/2014)に入るように十分に確認しておくべき
だと言えます。
いくら日本企業が欧州特許を保持していて契約内容を概ね決定で
きる強い立場にあるとしても、この点を無視したライセンス契約を締
結すると契約条項自体が無効と判断される可能性があるからです。
ここで、「セーフハーバー」とは、ライセンス契約の内容を定めら
れた一定の範囲内にしておくことで、EU競争法の適用を受けるとい
うリスクを回避することができる、いわば日本企業にとって「安全地
帯」となる契約内容を列挙したものです。
もう少し正確に説明すると、特定種類の技術移転契約に対して、E
U競争法第101条1項が定める一般的な禁止の適用を一括して免除す
るもので、この特定種類の技術移転契約の範囲内の契約内容にするこ
とで、その契約内容は自動的に法的に有効とみなされます。
この「セーフハーバー」の範囲内でライセンス契約をしている限り
において、日本企業はその法的効果を保証してもらえるのです。
したがって、法的安定性を求めるのであれば、まずはこの「セーフ
ハーバー」を十分に確認し、この範囲内に入るライセンス契約内容に
する必要があります。
なお、「セーフハーバー」に入らない契約であっても自動的に違法
とみなされるのではなく、個別的検討の結果として、EU競争法第1
01条1項の適用を免除されることはあります。
ただし、適用が不透明である実務からすれば、非常に見通しの低い
リスク含みのライセンス契約になってしまいます。
EU競争法の詳細、ドイツ法の適用については、引き続き本メルマ
ガにてご報告したいと思います。
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 野中 啓孝
TEL: 06-6202-3355
E-mail: h-nonaka@yglpc.com
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【注意が必要なのはマイナンバーだけではありません(個人情報保護
法の改正)】
1 最近では、いわゆる安全保障関連法や改正マイナンバー法などの
成立が注目されましたが、個人情報保護法(個人情報の保護に関す
る法律)も改正されたことをご存知でしょうか。
同法が平成15年に成立して以来の初めての実質的改正であり、公
布日(9月9日)から、2年以内に全面施行される予定ですので、個人
情報を取り扱う事業者としては、今後施行日までに準備が必要とな
ります。
2 個人情報を取り扱う事業者にとっては、以下のような重要な改正
点が含まれていますので、注意が必要です。
ア 個人情報の定義の明確化
身体的特徴等が該当する「個人識別符号」に関する規定が入
りました。
イ 「要配慮個人情報」の概念の新設
いわゆる機微情報を想定する「要配慮個人情報」については、
その取得に本人の事前同意が必要とされ、オプトアウト方式
による第三者提供が禁止されます。
ウ 「匿名加工情報」に関する規定の新設
「匿名加工情報」データベースを構成する匿名加工情報を作
成する際には、個人情報を、基準に従い加工する義務等の各
種の義務が新設されています。
エ 小規模事業者に対象拡大
これまで適用がなかった、取り扱う個人情報が5000人以下の
小規模事業者にも同法の義務が適用されるようになりました。
オ 第三者提供の記録の作成、保存義務の追加
第三者提供の際には、提供者、受領者双方に、記録の作成及
び保存が義務付けられました。
カ 直接罰規定の導入
これまでは主務大臣の命令に対する違反等があることを前提
とする間接罰のみでしたが、個人情報データベース等を取り
扱う事務に従事する者又は従事していた者による個人情報の
盗用行為等の一定の行為には、直接罰則が科せられるように
なりました。
キ 外国事業者への提供
原則として、我が国と同等水準の個人情報保護制度を有する
と認められる国として規則で定める外国にない第三者への提
供には、これを認める本人の同意が必要とされました。
ク 利用目的変更要件の緩和
「変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる」
範囲で足りるとされました(「相当の関連性」までは不要)。
ケ 個人保有データの開示請求権が明記されました。
コ オプトアウト方式による第三者提供には届出が必要となり、
公表されることになりました。
3 もっとも、「個人識別符号」、「要配慮情報」の詳細、「匿名加工情
報」の加工基準、第三者提供の際の記録内容等などは、政令・個人情報
保護委員会規則に委ねられていますので、今後も、その動向を注視する
必要があります。
ご不明な点などございましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士・個人情報保護士 森田 博
TEL: 06-6202-3542
E-mail: h-morita@yglpc.com
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【YGLPC連続セミナー 〜債権法改正について〜 第4回 開催のお知らせ】
第4回「民法債権法改正その4(債権管理(消滅時効、法定利率、保証))」
民法制定以来の社会・経済の変化への対応を図るため、現在、日常
生活や経済活動にかかわりの深い「契約」に関する規定を中心に見直
しが行われています。
本連続セミナー第4回は、平成27年10月14日(水)18時より開催し、
今回の民法改正により実質的な改正がなさることとなった債権管理
に関連する事項(消滅時効、法定利率、保証)について、改正内容及
び今後留意すべき点などについて解説します。
上記セミナーの詳細・お申込みついては、以下よりお願いいたしま
す。
お気軽にご参加ください。
https://www.yglpc.com/wp/news/20150310.html
<上記セミナーに関するお問い合わせ先>
弁護士 花房 裕志
TEL: 06-6202-4165
E-mail: h-hanafusa@yglpc.com
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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同
・発行日:2015年10月5日発行
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