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YGLPCメールマガジン第38号(2015年8月31日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

 

        ★ YGLPCメールマガジン第38号 ★

 

      〜労働法最前線、新判例紹介、その他1記事〜

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             今号の目次

           

1.労働法最前線

  〜仮眠・休憩時間中の労働時間該当性〜

 

2.債権譲渡と抗弁切断に関する新判例と債権法改正後の枠組み

 

3.YGLPC連続セミナー 〜債権法改正について〜 第3回 開催のお知らせ

 

過去のバックナンバー

 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

 

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【労働法最前線】

  〜仮眠・休憩時間中の労働時間該当性〜

 

 今回ご紹介するビソー工業事件(仙台高判平成25年2月13日労判1113号57頁。

以下「本判決」といいます。)は、警備員が仮眠・休憩時間に待機している時間が労働時間

といえるかが争われた事案です。平成26年8月26日に最高裁が上告棄却・不受理決定

したことにより、本判決が確定しました。

 一般に、労働時間とは使用者の指揮命令の下にある時間と考えられています。

そのため、仮眠時間や休憩時間であっても、労働からの解放が保障されていなければ、

労働時間と判断されることになります。仮眠・休憩時間の労働時間性を判断した

大星ビル管理事件(最判平成14年2月28日)及び大林ファシリティーズ事件

(最判平成19年10月19日)も、「労働契約上の役務の提供が義務付けられていると

評価される場合」には、労働からの解放を保障されているとはいえず、労働時間にあたる

と判示しています。もっとも、両判決は、「他の従業員が業務に従事していて

仮眠・休憩時間中に実作業に従事する必要が生じることが皆無に等しいなど、

実質的に実作業への従事が義務付けられていないと認めることができるような事情がある

場合」には、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているとは評価できず、そのような

仮眠・休憩時間は労働時間に当たらない、とも判示しています。

 本判決は、仮眠・休憩時間中に行われた実作業の回数・程度・内容について詳細に検討し、

実作業に従事した場合には作業時間に応じた手当が別途支給されていたことも考慮して、

仮眠・休憩時間中の実作業は例外的であり、仮眠・休憩時間中の警備員が常時、業務に従事

する態勢を要求されていたとは認められず、役務の提供の義務付けは無いと判断しました。

 未払賃金請求事件において、「休憩時間中であっても、現実には休憩できていなかった」

として、当該休憩時間部分の賃金も請求される事例が往々にしてあります。

前記のとおり、休憩時間が労働時間でないといえるか否かは、

労働からの解放が保障されているか否かで判断されます。

本判決は事例判断ですが、この判断の参考になりますので、ご紹介する次第です。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

  弁護士 白石 浩亮

  TEL:  06−6202−3324

  E-mail: k-shiraishi@yglpc.com

 

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【債権譲渡と抗弁切断に関する新判例と債権法改正後の枠組み】

 

1 債権譲渡と異議をとどめない承諾による抗弁切断に関する新判例

 現行民法468条1項前段は、債権譲渡について、債務者が異議をとどめずに承諾をした

場合には、債務者は、譲渡人に対して主張できた一切の抗弁事由を譲受人に対して

主張できなくなるという抗弁切断効を定めていますが、この抗弁切断の効果が発生するための

要件として、譲受人が、抗弁事由の存在を知らないこと(善意)だけでなく、

さらに知らないことに過失がないこと(無過失)まで必要であるかについては、

従前、無過失の要否について言及した最高裁判例はありませんでした。

 この問題について、平成27年6月1日、最高裁は、無過失であることを要するという

初めて判断を示したもので、最高裁は、譲受人と債務者との均衡に着目し、

「債務者が異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をした場合において、

譲渡人に対抗することができた事由の存在を譲受人が知らなかったとしても、

このことについて譲受人に過失があるときには、債務者は、当該事由をもって譲受人に

対抗することができると解するのが相当である。」旨判示しました

(最高裁第二小法廷平成27年6月1日判決平26(受)1817号・平26(受)2344号)。

 

2 債権法改正後の債権譲渡と抗弁切断

 ところで、今般の債権法改正法案では、上記異議をとどめない承諾の制度は廃止され、

債務者の単なる承諾をもって抗弁は切断されないことになります。そうすると、

債権譲渡時の抗弁切断は、今後は問題とならないのではないかとも思われるところですが、

以下の2点に注意が必要です。

 第1に、経過措置です。すなわち、現在国会に提出されている民法改正法案附則第22条に

よると、改正民法の施行日前に債権譲渡の原因である法律行為がされた場合には、

なお従前の例によることになりますので、異議をとどめない承諾による抗弁切断は、

譲受人が善意無過失である場合に、引き続き問題となります。

 第2に、債権法改正後においても、債務者がその意思表示により、抗弁を放棄することは

もとより自由であることが前提とされている点です。すなわち、今般の債権法改正においては、

異議をとどめない承諾が、「譲渡がされた旨を認識した旨の通知(観念の通知)」であることを

前提に、そのような認識の通知で抗弁切断という重大な効果を認めることを

否定することとなりましたが、抗弁を放棄するという意思表示の効果まで否定するものでは

ありませんので、債権譲渡による抗弁切断の問題は、今後は、専ら債務者の抗弁放棄という

意思表示の解釈によって決せられることになると考えられます。

 その意味で、今後は、取引を不安定なものとしかねない譲受人の主観によって、

抗弁切断の有無が直接左右されるものではありませんが、実務においては、

当事者間の均衡を重視する上記判例の趣旨からも、抗弁権放棄の債務者の承諾が

意思表示としての承諾であることを明確にし、放棄される抗弁についても、

当事者間の均衡を失しないように配慮することが重要と考えられます。

 

上記判例は、今後廃止が予定される制度に関する判例ではありますが、

債権法改正後の債権譲渡と抗弁切断の枠組みを改めて理解する観点から、

ご紹介させていただく次第です。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 蜷川 敦之 

TEL:06-6202-4163 

E-mail: a-ninagawa@yglpc.com

 

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【YGLPC連続セミナー 〜債権法改正について〜 第3回 開催のお知らせ】

 

 第3回「民法債権法改正その3(契約に関する基本原則及び定型約款)」

 

 民法制定以来の社会・経済の変化への対応を図るため、現在、日常生活や経済活動に

かかわりの深い「契約」に関する規定を中心に見直しが行われています。

 本連続セミナー第3回は、平成27年9月16日(水)18時より開催し、

今回の民法改正により新たに導入されることになった

定型約款に関する規定のほか、契約に関する基本原則について解説します。

 

 上記セミナーの詳細・お申込みついては、以下よりお願いいたします。

 お気軽にご参加ください。

 https://www.yglpc.com/wp/news/20150310.html

 

 

<上記セミナーに関するお問い合わせ先>

 弁護士 高橋 理恵子

 TEL:  06-6202-3465

 E-mail: r-takahashi@yglpc.com

 

 

 

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