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YGLPCメールマガジン第35号(2015年4月30日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

 

        ★ YGLPCメールマガジン第35号 ★

 

  〜 労働法最前線

   〜妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&Aの公表!〜

                                その他3記事〜

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             今号の目次

           

1.労働法最前線

  〜妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&Aの公表!〜

 

2.ここが変わる!民法改正(第3回)

 

3.スポーツ観戦における臨場感と安全性のバランス

 〜球場内事故で球団・施設管理者側の責任を認める初の判断〜

 

4.YGLPC連続セミナー 〜債権法改正について〜 開催のお知らせ

 

過去のバックナンバー

 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

 

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【労働法最前線〜妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A

の公表!〜】

 

 厚生労働省は,平成27年3月30日,「妊娠・出産・育児休業等を契機とする

不利益取扱いに係るQ&A」(以下「Q&A」といいます。注1)を公表しました。

 このQ&Aは,マスコミ等で「マタハラ訴訟」などと呼ばれている平成26年1

0月の最高裁判決を踏まえて,厚生労働省が平成27年1月23日付で改正した男

女雇用機会均等法・育児介護休業法の解釈通達(以下「本解釈通達」といいます。

注2)に関するものです。

 本解釈通達では,

 (1) 妊娠・出産,育児休業等を「契機として」不利益取扱いを行った場合,

    原則として男女雇用機会均等法9条3項・育児介護休業法10条違反にな

    ること,

 (2) 「契機として」なされたかどうかは,基本的に時間的に近接しているか

    否かで判断すること,

 (3) 前記(1)に該当する場合でも,男女雇用機会均等法9条3項・育児

   介護休業法10条違反にならない2つの例外的事情

が明らかにされました。

 そして,Q&Aでは,本解釈通達(2)の「契機として」の具体的判断基準とし

て,原則として妊娠・出産・育休等の事由の終了から1年以内に不利益取扱いがな

された場合を「契機として」いると判断するが,事由の終了から1年を超えている

場合であっても,実施時期が事前に決まっているか,ある程度定期的になされる措

置については,事由の終了後の最初のタイミングまでの間に不利益取扱いがなされ

た場合は「契機として」いると判断する,とされています。

 また,Q&Aでは,本解釈通達(3)の2つの例外的事情について,「業務上の必

要性」の有無の考慮要素や,「一般的な労働者なら同意するような合理的な理由が客

観的に存在する」か否かの判断考慮要素が具体的に記載されていますが,とりわけ,

「業務上の必要性」に関し,妊娠・出産に起因する症状によって労務提供できない

ことや労働能率の低下等は,本人の能力不足等に含めることはできない,としてい

る点に注意する必要があります。本解釈通達やQ&Aの内容には一部疑問もありま

すが,いずれにせよ今後は,本解釈通達やQ&A等にしたがった行政指導がなされ

ることになるため,妊婦等に対する労務管理については慎重な対応をする必要があ

ります。

 

注1

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/070330-1.pdf

注2

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000071927.pdf

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 佐 藤 康 行

 TEL:  06−6202−3460

 E-mail: y-sato@yglpc.com

 

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【ここが変わる!民法改正(第3回)】

 

「賃貸借」について,判例を踏まえたルールの明文化,及び新たなルールの新設が

なされます。

 

 今回は,民法改正の内容のうち,賃貸借について,主なポイントをご説明いたし

ます。

 

1 賃貸借の存続期間が,長くなります

  借地借家法の適用がない賃貸借の場合,現行民法では,存続期間の上限は「20

 年」であり,更新後の期間の上限も「20年」とされています(現行民法604条)。

  しかし,民法改正により,借地借家法の適用がない賃貸借について,存続期間

 の上限は「50年」となり,更新後の期間の上限も「50年」となります。

  この改正により,ゴルフ場敷地の賃貸借や,重機・プラントのリースなど,借

 地借家法が適用されない賃貸借契約において,50年までを上限として,従前より

 も長い期間を存続期間として定めることが可能となります。

 

2 「賃貸人たる地位の移転」に関する規定が,変わります

(1)賃貸人たる地位の当然承継

   現行民法605条は,「不動産の賃貸借は,これを登記したときは,その後その

  不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。」と

  定め,賃貸借の目的物である不動産が譲渡された場合における「賃貸借の対抗

  の問題」と「賃貸人の地位が移転すること」との二つの事項につき,同一の条

  文で定めています。

   しかし,今回の民法改正により,「賃貸人の地位が移転すること」については,

  独立して規定されることになり,「賃貸人たる地位は,譲渡人から譲受人に対し

  て当然に承継される」という原則が,これまでの判例法理を踏まえて明文化さ

  れることになりました。

(2)賃貸借を承継させない旨の合意

   今回の民法改正において,「賃貸人たる地位は,譲渡人から譲受人に対して当

  然に承継される」というルールは,飽くまでも原則であって,賃貸借の目的物で

  ある不動産の譲渡人と譲受人との間で,「賃貸人たる地位を承継させない合意(

  賃貸人たる地位を譲渡人に留保させる合意)」をすれば,賃貸人の地位を譲渡人

  に留保させることが可能となります。この場合における契約関係を図示すると,

  「譲受人―譲渡人―賃借人」ということになり,従前の「賃借人」は,「転借人」

  としての地位を有することになります。

   そして,賃貸人の地位が譲渡人に留保された場合において,譲受人と譲渡人と

  の間の賃貸借契約が終了したときは,譲渡人(すなわち,転貸人)の地位が譲受

  人に移転することになります。

   これは,賃貸不動産の信託による譲渡等の場面において賃貸人たる地位を旧所

  有者に留保するニーズが存在しており,このニーズは,賃貸人たる地位を承継し

  た新所有者の旧所有者に対する賃貸管理契約等によっては賄えないため,今回の

  民法改正により新たな規律が導入されることになった,とされています。

 

3 「敷金」が条文化されます

  賃貸借契約における「敷金」については,現行民法では定めが存在せず,敷金の

 意義や,敷金返還債務の発生要件,敷金の充当等については,判例が定めるところ

 に従っていました。今回の民法改正により,「敷金」に関する条文が新設され,敷

 金の意義等が条文上も明確化されることになりました。

  この「敷金」の条文は,これまでの判例法理を明文化するものであり,今回の民

 法改正によって,「敷金」の内容につき変更がなされるわけではないと解されてい

 ます。

  なお,改正後の条文では,「敷金」は,その対象を不動産を目的とする賃貸借にお

 いて授受されるものに限定していませんので,動産賃貸借においても「敷金」に関

 する条項が適用されることが予定されています。

 

4 「賃貸借に類似する契約」については,条文化が見送られました

  民法改正の検討段階では,「ファイナンスリース契約」及び「ライセンス契約」に

 つき明文の規定を設けることが検討されていましたが,結局,今回の民法改正では,

 条文化は見送られました。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 大 場 規 安

 TEL: 03-6267-1227

 E-mail: n-oba@yglpc.com

 

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【スポーツ観戦における臨場感と安全性のバランス〜球場内事故で球団・施設管理者側

の責任を認める初の判断〜】

 

 2010年8月,札幌ドームでの日本ハム対西武戦で,家族で観戦していた女性にラ

イナー性のボールが直撃し,右眼球破裂の重傷を負った事故に関する訴訟について,本

年3月26日,札幌地裁は,球団などに約4190万円の支払いを命じる判決を言い渡

しました。

 皆さんの中にも,野球観戦をしたことがある方は,ファウルボールで肝を冷やしたと

いう経験がおありかも知れません。

 プロ野球観戦においては,お酒も販売されていますし,食事をとりながら観戦すると

いうことも良くあります。

 そのような状況で,ファウルボールを避けきれずに怪我をしてしまった場合,球団や

施設管理者に対して工作物責任(民法717条)などを理由に賠償請求をすることができ

るのでしょうか?

 球場内における偶発的な事故に関する訴訟としては,これまで3件が裁判所に係属し,

いずれも被害者側の請求を棄却する判断が出されていました。

 その主な理由としては,プロ野球観戦には危険が伴うということを前提として観客に

も相応の注意義務が課されることを前提に,通常想定されるライナーを防ぐために十分

な高さのフェンスがあり,チケットの裏や看板・電光掲示板,警笛等で繰り返し注意喚

起をしていたこと等から,観客の安全性を確保するための合理性があるというものでし

た。

 これに対して冒頭の札幌地裁判決は,上記のような注意喚起に加えて,ボールから目

を離すと短時間で高速のボールが飛来し,死に至る可能性もあること,ボールを見失っ

たときに具体的に取るべき回避方法等についても周知しておくべきであったとして,観

客の安全性を確保するための合理性がないと判断しました。

 球団側が控訴している状況であり,結論は未だ出ていませんが,いずれにしても,球

場内における臨場感と安全性のバランスにつき,球団側としてはさらに詳細な安全対策

の検討が,観客としては観戦に内在する危険性の再認識が,それぞれ必要になると思わ

れます。

 観戦中の事故に限らず,スポーツ関係の問題に関して何かご不明な点等のある方はご

遠慮なくご相談ください。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 石原 遥平      

(公益財団法人日本スポーツ仲裁機構(JSAA)仲裁人・調停人候補者)

 TEL:   03−6267−1216

 E-mail: y-ishihara@yglpc.com

 

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【YGLPC連続セミナー 〜債権法改正について〜 開催のお知らせ】

 

 第1回「民法債権法改正その1(賃貸借)」

 

 民法制定以来の社会・経済の変化への対応を図るため,現在,日常生活や経済活動に

かかわりの深い「契約」に関する規定を中心に見直しが行われています。

 本連続セミナーでは,契約の中でも特に影響が大きいと思われるテーマをピックアッ

プして,改正の概要及び今後の実務への影響について解説させていただきます。

 

 上記セミナーの詳細・お申込みついては,以下よりお願いいたします。

 お気軽にご参加ください。

 https://www.yglpc.com/wp/news/20150310.html

 

<上記セミナーに関するお問い合わせ先>

 弁護士 木 村 浩 之

 TEL:  06-6202-4162

 E-mail: h-kimura@yglpc.com

 

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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同

・発行日:2015年4月30日発行

 

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