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YGLPCメールマガジン第34号(2015年3月31日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

 

        ★ YGLPCメールマガジン第34号 ★

 

      〜 セクハラに対する出勤停止処分(懲戒処分)等は有効か!?

       (労働法最前線)その他1記事〜

 

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            今号の目次

           

 1. 労働法最前線

   セクハラに対する出勤停止処分(懲戒処分)等は有効か!?

 

 2. ここが変わる!民法改正(第2回)

   「定型約款」に関する条文が新設されます。

 

 過去のバックナンバー

 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

 

 

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【労働法最前線】

セクハラに対する出勤停止処分(懲戒処分)等は有効か!?

 

1 今回ご紹介するのは、1年余にわたる女性従業員に対する性的な言動等に対する出勤停止処分(懲戒処分)等の有効性が争われた最判平成27年2月26日です。

 本件では、管理職の立場にあった従業員2名(以下「被処分者」といいます。)に対する懲戒処分としての出勤停止と、人事上の措置としての降格の是非が争われました。

 

2 そもそも、懲戒処分をするためには、懲戒事由に該当することに加え、懲戒処分が社会通念上相当であることが必要です(労働契約法15条)。従前、いわゆるセクハラ事案において、性的な言動に対する懲戒解雇等の重い処分は社会通念上相当でないとして、無効と判断する裁判例が散見されました。本件の原審の大阪高裁も、出勤停止処分と降格処分により、将来的に相当な額の収入減少につながるという被処分者の不利益の大きさに注目し、出勤停止処分は社会通念上相当ではないとして、同処分とこれを前提とする降格も無効と判断しました。

 

3 しかしながら、最高裁は、原審の判断を覆し、出勤停止処分も降格も有効であると判断しました。その判断には、セクハラに対する最高裁の厳しい姿勢を見てとることができ、今後の労務管理の参考とすべきでしょう。また、その姿勢の他にも、最高裁は、以下のような注目すべき判断を示しています。

  先ず、最高裁は、女性従業員が、明確な拒否の姿勢を示さなかったため、許されていると被処分者が誤信した可能性について、有利な事情として斟酌すべきでないと判断しました。行為の態様によっては、そのような誤信は斟酌しない、とする判断は刮目すべきでしょう。

  次に、本件では、出勤停止処分がなされたことを理由とする降格処分の有効性が争われました。一般論として、懲戒処分については、同じ理由で2度処分をしてはならない、との「二重処分禁止の原則」があり、本件の降格処分は、実質的にこの原則に抵触するのではないか、との問題が生じます。この問題について、最高裁は、懲戒処分を受けたことを降格事由とする資格等級制度規定について、「企業秩序や規律の保持それ自体のために降格を認める」ものであるとして、合理的であり、懲戒処分が有効である限り、降格処分も有効であると判断しました。

 

4 なお、本判決において、セクハラに対する研修への毎年への参加を義務付ける等、会社が職場におけるセクハラの防止に積極的に取り組んでいたことが、重く受け止められています。男女雇用機会均等法第11条においても、セクハラ防止策に対する措置を講じることが義務付けられておりますので、この取り組みも参考になると思われます。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 白 石 浩 亮

    TEL:  06−6202−3324

    E-mail: k-shiraishi@yglpc.com

                    

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【ここが変わる!民法改正(第2回)】

 「定型約款」に関する条文が新設されます。

 

 みなさん、「約款」をご存知でしょうか。現代社会では、鉄道や高速道路の通行、インターネットショッピングなどで広く約款が用いられていますが、実は、現行民法には約款に関する規定がありません。

そこで、今回の改正により新しく「定型約款」に関する規定が民法に導入されることになりました。

 

1 「定型約款」とは

 まず、改正後の民法によって規制される「定型約款」の定義が問題になります。

定型約款に該当するか否かは、

ア 不特定多数の者を相手方として行う取引であるか、

イ 内容が画一的であることが双方にとって合理的であるか、

ウ 契約の内容とすることを目的としたものか、

という点がポイントになります。相手方の個性に着目した取引や、契約内容を吟味し、交渉するのが通常である取引は定型約款にはあたりません。この意味で、いわゆる「ひな型」は、個別の交渉を前提とするものとして定型約款にはあたらないと考えられます。

 

2 定型約款が合意内容になるための条件

 約款は、一方当事者が準備したものであり、両当事者が合意したものではないため、本来であればそれにより両当事者が拘束されることはないはずです。そこで、改正民法は、定型約款が合意とみなされるための要件として、例えば、オンラインモールで商品を購入する場合に、どの店舗のサイトを利用して幾らで欲しい商品を買うか、といった意思の合致のほかに、

ア 定型約款を契約の内容とする旨の合意、

もしくは、

イ 定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたこと、

が必要であると規定しました。具体的には、そのホームページにおいて定型約款を開示し、これを契約内容とする旨を明示することは、上記イの要件を満たすと考えられます。

 

3 定型約款の内容の表示

 改正民法は、定型約款を準備した者に対し、

ア 相手方から合意の前又は合意後相当期間内に約款の開示請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならないこと(ただし、既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、またはこれを記録した電磁的記録を提供していた場合は不要)、

イ 定型約款を準備した者がアの請求を拒んだときは、定型約款の内容は当事者間の合意とはならないこと、を規定しています(ただし、一時的な通信障害などの正当な事由によって開示請求を拒んだときは例外的に合意があったとみなされます)。定型約款を準備した者は、常に定型約款の開示が義務付けられているわけではありませんが、開示請求には応じなければならないので、留意が必要です。

 

4 不当な条項の規制

 改正民法は、定型約款に不当な条項が含まれる場合に、当該条項については当事者間の合意とはみなされないとしています。不当な条項とは、「相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして民法第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの」と規定されています。

 

5 定型約款の変更

 従来、約款の変更は、約款を準備した者が一方的に行ってきました。この点について、改正民法は、定型約款の変更が認められるための要件を規定しました。具体的には、

ア 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき、

もしくは、

イ 定型約款の変更が、契約をした目的に反せずかつ変更が合理的であるときに、変更後の約款が当事者間の合意とみなされます。イの要件については、変更の必要性や変更後の内容の相当性、変更をすることがある旨の定めの有無及び内容、その他の変更に係る事情が総合考慮されますので、少なくとも、条項の変更があり得ることを定型約款の内容として規定しておくことが望ましいといえます。

 なお、定型約款の変更には、効力発生時期までに、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの使用その他の適切な方法により周知しなければならず、効力発生時期までにこのような周知をしなければ変更の効力が生じないとされていますので、このような手続面にも留意が必要です。

 

6 改正法施行に向けた準備

 以上の改正を踏まえた準備事項としては、まず、使用している約款が「定型約款」に該当するか否かを判断することが必要です。その上で、「定型約款」に該当する場合には、

ア ホームページ等で定型約款の内容を開示し、それが契約内容となることを明記すること、

及び、

イ 定型約款の中に、定型約款の内容を改定することがある旨の条項を設けること

(できれば、「○か月前までに告知した上で改定する」といった予告期間を設けることが有用です。)が必要であると考えられます。 

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 高 橋 理恵子

    TEL: 06-6202-3465

    E-mail:r-takahashi@yglpc.com

 

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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同

・発行日:2015年3月31日発行

 

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