トピックス

YGLPCメールマガジン第28号(2014年9月30日発行)

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…

         弁護士法人淀屋橋・山上合同

 

        ★ YGLPCメールマガジン第28号 ★

 

      〜 就職前にうつ病を発症していても、労災認定!?

                                                   その他2記事〜

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…

              

             今号の目次

 

 1. 労働法最前線 〜就職前にうつ病を発症していても、労災認定!?〜

 

 2. YGLPC連続セミナー開催のお知らせ〜『事業承継の実務』〜

 

 3. ★最新判例 豆知識★ 〜NHK受信料の消滅時効〜

 

 

過去のバックナンバー

 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

 

■─────────────────────────────

【労働法最前線〜就職前にうつ病を発症していても、労災認定!?〜】

 

 東京地裁は、平成26年9月17日、うつ病の既往歴のある従業員が、

入社後の業務上のストレスにより自殺した事案について、労災と認め、八

王子労働基準監督署による遺族補償給付の不支給決定を取り消しました。

 この従業員は入社の3年前に、うつ病の治療を受けていましたが、アル

バイト採用された平成17年頃には、うつ病の症状は見られなくなってい

ました(「完治」ではなく、病状が安定する「寛解」と呼ばれる状態と思わ

れます)。平成18年8月末に正社員登用され、喫茶店の責任者となったも

のの、アルバイトの多くが相次いで退職する等、人手不足に悩み、同年12

月に飛び降り自殺しました。

 

 遺族の労災申請に対し、八王子労働基監督署は、入社前のうつ病の治療歴

があることから、業務上の疾病には該当しないと判断し、遺族補償給付を不

支給としていました。

 これに対し、東京地裁は、入社時には安定した状態で通常の勤務を行って

いたことを指摘し、店舗責任者への就任や、相次ぐアルバイトの退職等の人

手不足への対応といった心理的ストレスが重なって自殺に至ったと判断し、

業務起因性を認め、前記の不支給決定を取り消しました。

 

 従前の行政実務では、業務に起因してうつ病等の精神疾患を発病したかど

うかを重視しますので、精神疾患の既往歴がある場合には、これを増悪させ

るような「特別な事情」が無い場合には、業務起因性を否定するのが一般的

でしたが、本裁判例は、安定した状態で通常の勤務を行っていたことを重視

して、既往歴があるにもかかわらず、業務起因性を肯定し労災に当たると認

めた点に特徴があります。

 この裁判例のような判断が定着するか否か、射程がどこまで及ぶのか、に

ついては、今後の裁判例の集積を待つほかありませんが、この裁判例の考え

方からすれば、業務外のうつ病を発症し、私傷病休職後に寛解状態で復職し

た従業員が、再びうつ病を発症した場合、業務内容等心理的ストレスの程度

如何では、労災認定される可能性があるといえるでしょう。

 なお、本裁判例は労災該当性についての判断ですので、同様の事案で直ち

に安全配慮義務違反が問われるか否か、はまた別の問題です。いずれにせよ

休職・復職を巡る労務管理にも、一石を投じる可能性のある裁判例ですので

ご紹介する次第です。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 白 石 浩 亮

TEL:  06−6202−3324

E-mail: k-shiraishi@yglpc.com

 

■──────────────────────────────────

【YGLPC連続セミナー開催のお知らせ】

 

『事業承継の実務』

 

 当法人において、「YGLPC連続セミナー」を定期的に開催させていただいてお

りますが、第4回として、平成26年10月8日18時より、「事業承継の実務」を

テーマとして、当法人の上甲悌二弁護士及び蜷川敦之弁護士がセミナーを開催い

たします。

 

1.「事業承継」とは、文字通り、事業を後継者に承継させることをいいますが、

 いまだ承継させる段階にない多くの事業者は、将来のことと考えがちです。

  その結果、ほぼすべての事業者がいずれは直面する問題であるにもかかわら

 ず十分な対策ができていなかったり、そもそも基本的事項についての理解すら

 後回しになっていることが多いというのが実情と思われます。

 

2.この点、事業承継には、「(1)経営の承継」と「(2)株式や事業用資産の承

 継」という2つの側面があり、円滑で安定的な事業の承継を行うには、経営者と

 して必要な業務知識や経験、人脈などを、主に後継者教育により承継させていく

 (1)の側面 だけでなく、後継者や協力的な株主に相当数の株式や事業用資産

 を集中させるという(2)の側面が重要であり、この点も意識して対策を検討す

 る必要があります。

  このことは、経営者自身が大部分の自社株式や事業用資産を保有し、事業を維

 持・発展させているケースが多いという我が国の中小企業においては、より顕著

 にあてはまると考えられます。

 

3.ところが、これら事業承継対策というのは、一般に、時間のかかる問題であり、

 いざ事業承継が必要という段階に至ってからでは間に合わず、最悪の場合、何もし

 ないまま、後継者間・相続人間で争いが顕在化し、何年にもわたる法廷闘争の結果、

 事業の存続自体に支障が生じることも少なくありません。

 

  そこで、早期の段階で事業承継というものをイメージし、ポイントを押さえた上、

 早めの対策を行うことが重要となります。

 

4.本セミナーでは、主に中小企業の事業承継を念頭に、弁護士としての視点を交えな

 がら、これだけは押さえておくべき基本的事項、枠組み等について、解説を行う予定

 です。

 

 上記セミナーの詳細・お申込みついては、以下よりお願いいたします。

 お気軽にご参加ください。

 https://www.yglpc.com/wp/news/20140114.html

 

 

<上記セミナーに関するお問い合わせ先>

 弁護士 蜷 川 敦 之

  TEL: 06-6202-4163

  E-mail:a-ninagawa@yglpc.com

 

■────────────────────────────────  

【最新判例 豆知識〜NHKの受信料の消滅時効〜】

 

 平成26年9月5日、最高裁第二小法廷は、NHKの放送の受信についての

契約における受信料は、民法169条により、その消滅時効は、5年と判断し

ました。

 民法169条(定期給付債権の短期消滅時効)は、「年又はこれより短い時期

によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないと

きは、消滅する」と定めていますが、NHKの受信料は、月払い、6か月若しく

は12か月前払額での支払を内容とするので、この条文の規定に該当すると判断

されています。

 他にもNHKの受信料と同じように、この条文で過去に、消滅時効が5年と判

断されたものがあります。月払いのマンションの管理費及び特別修繕費にかかる

債権です。また、賃貸借契約における賃料債権もこれに該当します。

 なお、消滅時効と言っても5年間放置すれば自動的に消滅するものではなく、

債務者の側において消滅時効を主張しますという時効の援用の意思表示(具体的

には援用する旨を書いた文書を送る等)が必要です。

 また、時効完成した後に、債務者が滞納している債務につきその支払いを約束し

た場合や、債務の一部を支払ったような場合には、時効が完成していることを知ら

なかった場合でも、消滅時効の援用はできなくなります。

 債権回収の観点からは、月払いや1年又は半年払いの債権については、消滅時効

が完成しないように時効中断措置(訴訟、承認、仮差押え等)をとるなど、十分な

時効管理が求められます。

 また、債権の種類によっては、5年より短期の消滅時効が定められている債権もあ

ります(職業別の短期消滅時効)ので、注意が必要です。

 なお、現在進められています民法改正作業の要綱仮案では、民法169条や職業別

の短期消滅時効の規定はいずれも削除され、債権の消滅時効は「権利を行使すること

ができることを知ったときから5年」、又は「権利を行使することができるときから、

10年」行使しないときは、時効により消滅すると規定されていますので、将来的に

は債権の消滅時効期間がこのように統一的に改正される可能性があります。

 

<上記記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 西 田   恵

  TEL: 06-6202-3004

  E-mail:m-nishida@yglpc.com

—————————————————————-

・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同

・発行日:平成26年9月1日発行

 

・本メールマガジンの配信停止・解除・配信先変更をご希望の場合、

  又は、本メールマガジンについてご意見等がある場合には、

  newsletter@yglpc.com

 までご連絡願います。

 

・本メールマガジンの一部又は全部の無断転載等は禁止いたします。