弁護士法人 淀屋橋・山上合同

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YGLPCメールマガジン第47号(2016年12月7日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

        ★ YGLPCメールマガジン第47号 ★

 【労働法最前線】
  「正社員」と「契約社員」「嘱託社員」の労働条件の相違について(3)

          その他1記事〜
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          今号の目次
        

 1.労働法最前線
  〜「正社員」と「契約社員」「嘱託社員」の労働条件の相違について(3)〜

 2.インターネット上の誹謗中傷への法的対応

 過去のバックナンバー(ページ下部)
 http://www.yglpc.com/topics/index.html

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【労働法最前線】
 〜「正社員」と「契約社員」「嘱託社員」の労働条件の相違について(3)〜

メールマガジン第43号で内容を一部ご紹介した長澤運輸事件について、控
訴審の判決(東京高判平成28年11月2日労判1144号掲載予定。
以下「本判決」といいます。)が言い渡されましたので、ご紹介いたします。
雇用期間の定めの無い社員と雇用期間の定めのある社員の労働条件の相違に
関しては、労働契約法(以下「労契法」といいます。)20条が、雇用期間の
定めがあることを理由とする不合理な労働条件の相違を禁止しています。
この点について、本判決は、以下のように判断し、一審の東京地裁判決を取
り消し、一審原告(被控訴人)の主位的請求及び予備的請求のいずれも棄却
しました。
(1)定年後再雇用された雇用期間の定めのある労働契約にも労契法20条は
適用される。
(2)労契法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者の間の労働条件の相違
が不合理と認められるか否かの考慮要素として、「職務の内容」、「当該職務
の内容及び配置の変更の範囲」のほか、「その他の事情」を掲げている。
(3)「その他の事情」との関係では、「職務の内容」及び「当該職務の内容及
び配置の変更の範囲」に関連する諸事情を幅広く総合的に考慮して判断すべき
であるが、本件において、「職務の内容」及び「当該職務の内容及び配置の変
更の範囲」については、有期契約労働者と無期契約労働者の間で概ね相違はな
い。
(4)(「その他の事情」について)定年後再雇用されるにあたり、その賃金が
引き下げられるのが通例であることは、公知の事実といえるが、本件の定年後
再雇用後の減額幅は、長澤運輸の属する規模の企業の平均の減額率をかなり下
回っている。長澤運輸の本業である運輸業が、収支が大幅な赤字となっている
と推認できることを併せ考慮すると、定年後再雇用に当たり年収ベースで2割
前後賃金が減額になっていることが直ちに不合理であるとは認められない。
 また、一審原告(被控訴人)は、「個々の労働条件、具体的には賃金構成の
各項目について、その相違が不合理であるか否かが判断されるべきである」と
主張しましたが、本判決はこの主張を採用しませんでした。この点において、
労契法の施行通達を引用して個々の労働条件ごとに不合理性を検討した、
ハマキョウレックス事件の控訴審判決(大阪高判平成28年7月26日労判
1143号5頁)とも異なる立場に立っています。
 私見ではありますが、本判決は、労契法20条の正しい解釈を示し、また、
同条に抵触するか否かについて柔軟な判断を可能とする規範を定立しており、
バランスの取れた判決だと思料いたします。「職務の内容」、「当該職務の内
容及び配置の変更の範囲」に相違がない場合でも、労働条件の相違が不合理で
ない場合がありうることを明確にした点において、実務上極めて意義のある
判決であると考えますので、ご紹介する次第です。
 詳細は、別途当弁護士法人ホームページのQ&Aをご参照ください。
 http://www.yglpc.com/contents/qa/

<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 白 石 浩 亮
TEL: 06−6202−3324
E-mail: k-shiraishi@yglpc.com

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【インターネット上の誹謗中傷への法的対応】

1.はじめに
スマートフォンの普及に伴い、いつでもどこでもインターネットに容易に接続
できる時代になり、生活が便利になる一方で、「ネット詐欺」、「個人情報漏洩」、
「著作権侵害」など、さまざまなインターネット上のトラブルが起こっており、
法律家として、そのようなトラブルに関わることも少なくありません。
今回は、中でも、企業や個人に対するインターネット上の誹謗中傷を取り上げ
ます。

2.企業や個人に対するインターネット上の誹謗中傷への法的対応
 企業や個人に対する誹謗中傷が従前行われてきた場として、「2ちゃんねる」
などの特定のウェブサイトを挙げることができます。
 誹謗中傷への対応としては、1.過去の誹謗中傷の書込みを削除すること、
及び2.その書込みを行った人物を特定し、将来的な誹謗中傷の書込みを防止
すること、という大きく二つの対応が考えられます。
 法的には、1については、(通説的見解によれば)人格権侵害に基づく差止請
求(としての書込み削除)を、2については、「特定電気通信役務提供者の損害
賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ制限責任法)
に基づく発信者情報開示を行うことになります。
ここで、「2ちゃんねる」を例に、より具体的に話を進めていきます。

3.「2ちゃんねる」での誹謗中傷への法的対応
(1)「2ちゃんねる」と称する電子掲示板は、もともと、ドメインが2ch.net
のもののみでしたが、平成26年、ドメインが2ch.scのものが新たに設立された
ため、現在、「2ちゃんねる」と称する電子掲示板は2つ存在します。
後発である2ch.scのものは、ドメインが2ch.netのものをコピーしているため、
ドメインが2ch.netのものに投稿された記事と全く同じ記事が2ch.scのものに
も掲載されます。
また、2ch.scのものにも独自の投稿システムが存在するため、ドメインが
2ch.netのものには存在せず、2ch.scのものに存在する記事がある場合もあり
ます。
2ch.netの運営者は、フィリピン法人Race Queen,Inc.で、2ch.scの運営者は、
シンガポール法人PACKET MONSTER INC.PTE.LTD.となります。
(2)以上により、2ch.netと2ch.scに対して、書込み削除及び発信者情報開
示を求める場合には、それぞれ法的対応が異なります。
 端的には、発信者情報開示の場合には、2ch.netと2ch.scのいずれに対して
も、裁判所による発信者情報開示仮処分命令が必要となります。また、書込み
削除の場合には、必ずしも裁判所による書込み削除仮処分命令を得る必要はな
く、それぞれの掲示板内の独自のルールに基づき書込み削除を求めることがで
きますが、確実に削除に繋がる訳ではなく、裁判所による書込み削除仮処分命
令を得た方が直截です。
発信者情報開示仮処分命令の申立ての管轄裁判所は、2ch.netと2ch.scの場合
でも、東京地方裁判所となります。一方で、書込み削除仮処分命令の申立ての
管轄裁判所は、東京地方裁判所の他に、人格権侵害に基づく差止請求であるこ
とから不法行為の性質を帯びるものとして、不法行為地(誹謗中傷の被害者の
住所地)を管轄裁判所に選択することもできます。もっとも、「2ちゃんねる」
に関する発信者情報開示仮処分命令及び書込み削除仮処分命令の申立てのい
ずれにおいても、東京地方裁判所で扱われる件数が圧倒的に多く、東京地方裁
判所で申立てを行うことで効率的な審理が期待できると考えます。
(3)東京地方裁判所で申立てを行うものとして整理すると、2ch.netの場合
には、フィリピン法人Race Queen、Inc.を相手方とする必要があり、裁判所に
よる書込み削除仮処分命令を得るためには、書類の英訳及びフィリピンへの送
達が必要となり、同命令を得るまでに、10か月程度の時間を要するようです。
もっとも、裁判所による発信者情報開示仮処分命令を得るだけであれば、書類
の英訳やフィリピンへの送達は不要との運用がなされているようです。
一方で、2ch.scの場合には、シンガポール法人PACKET MONSTER INC.
PTE.LTD.を相手方とする必要がありますが、裁判所による書込み削除仮処分
命令及び発信者情報開示仮処分命令のいずれを得るためでも、書類の英訳及び
シンガポールへの送達が不要との運用がなされているようです。
なお、いずれの場合にも、フィリピン法人及びシンガポール法人の資格証明書
及びその和訳は必要となります。
(4)発信者情報開示仮処分命令の申立て後の手順ですが、裁判所から、発信
者情報開示仮処分命令の発令を受けたのち、以下の1ないし4の手順を踏みま
す。
1.「2ちゃんねる」への発信者情報開示の連絡
2.プロバイダに対する発信者情報の消去禁止仮処分の申立て
※ アクセスログの保存期間がプロバイダによって異なるため(3か月から6
か月程度のようです。)、3.の前に、プロバイダに対して、アクセスログに係る
発信者情報の消去禁止を求める仮処分の申立てを行う必要性が生じる場合があ
ります。
3.発信者情報開示請求訴訟
※ アクセスログを基に、プロバイダ(インターネットに接続するための光
ファイバーやADSLなどの回線を提供する事業者です。)を特定の上、当該プロ
バイダに対して、発信者情報(住所・氏名メールアドレス・電話番号など)の
開示を求めることになります。
なお、訴訟提起によらなくても、プロバイダが任意の開示に応じる場合があり
ます。
4.発信者に対する損害賠償請求等の連絡(将来的な誹謗中傷の書込みの防止)
(5)書込み削除仮処分命令の申立て後の手順ですが、裁判所から、書込み削
除仮処分命令の発令を受けたのち、「2ちゃんねる」への削除依頼の連絡を行
います。

4.最後に
 「2ちゃんねる」を例に、企業や個人に対するインターネット上の誹謗中傷
への法的対応について記載しましたが、各ウェブサイトに応じて、それぞれ法
的対応が異なりますので、事案ごとにケースバイケースで柔軟に対応する必要
があります。

<この記事に関するお問い合わせ先>
  弁護士 大 川 恒 星
  TEL: 06−6202−7551
  E-mail: koji-okawa@yglpc.com

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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同
・発行日:2016年12月7日発行

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