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YGLPCメールマガジン第48号(2017年2月17日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

        ★ YGLPCメールマガジン第48号 ★

 〜 相続預貯金に関する判例変更に伴う銀行実務への影響
その他1記事〜
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            今号の目次
           
 1.相続預貯金に関する判例変更に伴う銀行実務への影響
 
 2.新人弁護士のご紹介
 
 過去のバックナンバー
 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

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【相続預貯金に関する判例変更に伴う銀行実務への影響】

1.最高裁は、先般、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯
金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて遺産分割の対象
となる旨判示し、従来の取扱いを大きく変更しました(最大決平成28年12月
19日。以下「本決定」といいます。)。

2.これまで、預金債権のような可分債権は、相続開始と同時に法律上当然に
分割され、各共同相続人がその法定相続分に応じて権利を承継するというのが
判例の法理(最一小判昭和29年4月8日等)であり、これが確立していた一方
で、金融実務では、相続人間の争いに巻き込まれるリスクを取りたくないとの
自己防衛の目的から、原則として相続人全員の署名押印を求めるという「運
用」がなされており、判例法理と運用との間に大きなギャップがありました。
  しかしながら、金融機関が払戻しに応じなかった場合、金融機関を被告と
する払戻請求訴訟が提起され、近時の低金利にもかかわらず、民法419条の金
銭債務の特則によって、原則として、法定利率による債務不履行責任に基づく
遅延損害金の支払義務をも負うことになり、多大な負担となっていました。
また、近時、相続人の範囲が確定でき払戻しに応じたとしてもトラブルに巻き
込まれる恐れはないと合理的に判断されるようなケースで払戻しに応じなかっ
た場合に、不法行為責任が肯定されるという事例まで出現しました(大阪高判
平成26年3月20日)。
  すなわち、これまでの判例法理のもとでは、金融機関は、相続人間の争い
に巻き込まれるリスク(ひいては二重払いのリスク)をとって相続人の一部か
らの払戻しに応じるか、それとも、債務不履行責任に基づく法定利率による遅
延損害金の支払義務を甘受し、ときには不法行為責任も問われるリスクもとっ
て払戻しを拒絶するか、という極めて微妙な選択を迫られてきたものといえま
す。

3.そうした中、本決定が出たことで、金融機関としては、今後、基本的に
は、相続人間の遺産分割を待って払い戻せばよいことになりますから、相続
人間の争いに巻き込まれるリスク(二重払いのリスク)をとって払い戻す必
要もなければ、そもそも相続人の一部からの払戻請求訴訟が極めて減少する
以上、債務不履行責任に基づく遅延損害金の支払義務を負う場面も減り、こ
れまでのジレンマから、大幅に解放されることになります。この点で、本決
定は、金融機関にとって、大変画期的な判例変更ということができます。  
  なお、本決定では、いつ発生した相続から適用されるかという点には
言及されていないことから、決定後に発生した相続については射程が及ぶこ
とについて明らかではあるものの、決定以前に生じた相続にまで射程が及ぶ
かについては、結論としては肯定してよいように思われるものの、検討の余
地がないではないと思われます。また、本決定では、定期預金についての言
及がなく、この点についても議論の余地があるものの、定期貯金につき遺産
分割の対象になるとされた理由づけである、多数の者を対象とした大量の事
務を迅速かつ画一的に処理する必要性は、基本的には定期預金にも妥当し、
本決定の射程は及ぶと理解してよいと思われます。いずれの点についても、
既に、上記のような取扱いにより対応している例がみられます。

4.本決定に先立ち、平成28年6月に法制審議会から出された「民法(相続
関係)等の改正に関する中間試案」では、可分債権は相続の開始により当然
に分割されることを前提としつつ、これを遺産分割の対象に含める【甲案】
と、可分債権を遺産分割の対象に含めることとし、かつ、遺産分割が終了す
るまでの間、可分債権の行使を禁止する【乙案】が提示されており、本決定
は、基本的には【乙案】の趣旨にそったものといえます。
  今後、本決定に沿って、法制審議が行われることが想定されますが、
本決定によって新たに生じた課題への対応(遺産分割終了までの相続人の
資金の必要性に応じた払戻し等)もあわせ、今後の立法を注視する必要が
あります。

<この記事に関するお問い合わせ先>
  弁護士 水井 大
  e-mail: dai-mizui@yglpc.com
  TEL: 06-6202-8537

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【新人弁護士のご紹介】

  当法人は,2017年1月から,新たに杉本喬弁護士、田島佑規弁護士、
三本洋樹弁護士を迎えました。

杉本喬弁護士からのご挨拶]
 
  皆様に初めてご挨拶させていただきます。
  本年1月に当法人に入所いたしました、弁護士の杉本喬と申します。
  入所前は、りそな銀行にて5年間働いておりました。民間企業における
職務経験を活かし、お客様の満足を第一に考える「クライアント・ファース
ト」をモットーに、弁護士業に取り組んでまいります。
  皆様の法的ニーズに迅速にこたえることができるよう、日々研鑽に努め
てまいりますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

田島佑規弁護士からのご挨拶]

  はじめまして。本年1月から入所致しました、弁護士の田島佑規と申します。
  私は大阪府高槻市の出身で、高槻から中高は京都に、大学は神戸に、
ロースクールはまた京都へ通うというまさに新快速の申し子のような人生を
歩んできました。
  せっかくの自己紹介の場ですので、私の名前の紹介をさせてください。
まず私の「佑」という漢字には人を助けるといった意味があるそうです。
そして、この字に規則の「規」を組み合わせた「佑規」という名前には
「規則を使って人を助ける」といった意味が込められている。と、私が弁護
士になった途端、急に親が言い始めました。あとづけ感がすごいです(昔は
正岡子規の規や!とか言っていたような)。
  しかし、結果として「規則を使って人を助ける」というフレーズは、法
律といったルールを用いて人々のより良い明日に貢献していきたいと考えて
いる私にとって、ぴったりなものとなっているような気が致します(人は知
らず知らずのうちに名前に影響されるのかもしれません)。
  今後は、自らの名前が持つ意味合いを実現できる弁護士となるべく、目
の前の事象に全力で取り組み、日々成長できるよう力の限りを尽くしていき
たいと考えております。
  皆様のご指導ご鞭撻のほどを宜しくお願い致します。

三本洋樹弁護士からのご挨拶]

  皆様初めまして。弊所の東京事務所に1月より入所しました三本洋樹
申します。
  私は、静岡出身で、大学から東京に移り住むこととなりました。
  東京では、日々様々な会社やお店ができ、進化を続けています。
  おかげで趣味のラーメン屋巡りが捗る!ということもありますが、皆様
にベストサービスを提供するため、自分自身の能力も進化を続けるべく日々
精進していく所存です。
  また、私は、一度始めたことは徹底的にやるということを信条としてお
ります。
  この信条と趣味の食べ歩きが重なった結果、現在は順調に肥満の道を歩
んでおりますが、この信条は、仕事においても貫いていく所存です。
  一つ一つの案件に全力を尽くし、クライアントの皆様に喜んで頂ける結
果を提供できるよう徹底した仕事に励んでまいります。
  どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同
・発行日:2017年2月17日発行

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