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YGLPCメールマガジン第46号(2016年11月2日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

        ★ YGLPCメールマガジン第46号 ★

 【労働法最前線】

  定年後再雇用時の業務内容の変更が違法となる場合がある!?

          その他1記事〜
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              今号の目次
           
 1.労働法最前線

  定年後再雇用時の業務内容の変更が違法となる場合がある!?
 
 2.スポーツ団体のガバナンス

  スポーツ団体のガバナンス

  過去のバックナンバー
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【労働法最前線】

定年後再雇用時の業務内容の変更が違法となる場合がある!?

定年後の継続雇用制度の悩ましい問題の1つに、定年を迎えた従業員にどのような業務を担当させればよいか、という問題があります。
メールマガジン第43号でご紹介した長澤運輸事件の東京地裁判決を踏まえますと、対応策として、定年前とは業務の内容や責任の範囲を変更することが考えられます。

今回ご紹介するのは、定年後の継続雇用制度において業務内容の変更がどの程度可能かについて判断した裁判例(名古屋高判平成28年9月28日)です。
本件は、トヨタ自動車株式会社(以下「本件会社」といいます。)において、事務職に従事していた労働者が、本件会社の提示する定年後の業務を拒否したために、定年後の再雇用に至らず退職となった事案です。
この労働者は、雇用契約上の地位の確認と損害賠償を求めて訴訟提起しました。

原審判決(地裁)も本件判決も雇用契約上の地位は認めませんでしたが、本件判決は、大要以下のように述べて不法行為に基づく損害賠償責任を認める判決を言い渡しました。

(1)定年後の継続雇用としてどのような労働条件を提示するかについては一定の裁量があるとしても、提示した労働条件が、無年金・無収入の期間の発生を防ぐという高年齢者雇用安定法の趣旨に照らして到底容認できないような低額の給与水準であったり、社会通念に照らし当該労働者にとって到底受け入れ難いような職務内容を提示するなど実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められない場合においては、当該事業者の対応は高年齢者雇用安定法の趣旨に明らかに反する。

(2)本件会社が提示した業務内容は、シュレッダー機ごみ袋交換及び清掃、再生紙管理、業務用車掃除、清掃というものであり、事務職としての業務内容ではなく、単純労務職(地公法57条参照)としての業務内容である。

(3)定年前と異なる業務内容を示すことは許されるが、全く別個の職種に属するなど性質が異なる場合には、継続雇用の実質を欠いており、むしろ通常解雇と新規採用の複合行為であって、従前の職種全般について適格性を欠くなど通常解雇を相当とする事情がない限り、そのような業務内容を提示することは許されない。

(4)本件会社の提示は、当該労働者がいかなる事務職の業務についてもそれに耐えられないなど通常解雇に相当する事情が認められない限り、高年齢者雇用安定法の趣旨に反して違法である。

本判決は、定年後の再雇用について、定年前と異なる業務を提示すること自体は許容されるものの、その提示内容次第では、高年齢者雇用安定法の趣旨に反して違法となる可能性があることを明らかにしました。
上記 (3)及び(4)の判断は、定年退職を普通解雇と同視するものであることに加え、普通解雇事由の存否に関しても、事務職全般の業務に耐えられないことを要求する等の疑問がありますが、上記(1)の判断は、定年後再雇用後に提示する業務・労働条件を考える際に参考になると考えますので、ご紹介する次第です。

<この記事に関するお問い合わせ先>
  弁護士 白 石 浩 亮
  TEL: 06−6202−3324
  E-mail: k-shiraishi@yglpc.com

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【スポーツ団体のガバナンス】

リオデジャネイロでのオリンピック・パラリンピックも終わって既に1か月以上が経ち、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けての準備も本格化してきました。
近年、スポーツイベントに集まる社会からの注目がますます増えてくる中で、「スポーツ団体のガバナンスの問題」が重要視されるようになっています。

1.スポーツ団体のガバナンスとは
 平成23年8月24日に施行されたスポーツ基本法によれば、スポーツ団体とは、「スポーツの振興のための事業を行うことを主たる目的とする団体」であると定義されています(2条2項)。
例えば、日本オリンピック協会、日本障がい者スポーツ協会などがこれに当たります。
スポーツ団体のガバナンスとは、このようなスポーツ団体が事業の適正な運営を確保できているか、その運営を適切に監視する仕組みが構築されているかという問題です。

2.スポーツ基本法上の定め
 スポーツ基本法は、スポーツ団体が「その運営の透明性の確保を図るとともに、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成するよう努め」(5条2項)、「スポーツに関する紛争について、迅速かつ適正な解決に努めるものとする」(同3項)と定めています。
 これらの規定はあくまで努力規定であり、具体的な義務を課したものではありません。
しかし、法は、スポーツ団体に対して、透明性の確保・自らが遵守すべき基準の作成・迅速かつ適正な紛争解決といった方法により、ガバナンスの適正化を求めていることが明らかであり、今後、この問題に関する具体的な法規範を整備する動きが加速していくことが予想されます。

3.ガイドラインの公表
 スポーツ団体のガバナンスの指針については、文部科学省の委託事業の一環として、「NF組織運営におけるフェアプレーガイドライン」が平成27年3月3日に公表されています。
このガイドラインは、各種競技団体を統括する団体である中央競技団体(National Federation、国内統括競技団体とも言われます)向けのものですが、全てのスポーツ団体にとって非常に参考になるものです。

 同ガイドラインは、7つのガバナンス原則として(1)権限と責任の明確化、(2)倫理的な行動・法令遵守、(3)適正なルール整備、(4)透明性と説明責任、(5)戦略的計画性、(6)多様なステークホルダー(利害関係者)の尊重、(7)効果的な財務運営を挙げた上で、個別の項目に関するチェックリスト、解説等を紹介しています。
詳しくは、スポーツ団体のガバナンスに関する協力者会議の下記HPをご参照ください。
→ http://www.jsaa.jp/ws/governanceindex.html

 スポーツ団体の運営に携わる方は、同ガイドラインを参照し、場合によっては専門家に相談するなどして、改めてガバナンスに対する意識を高めつつ、組織運営を行っていくことが今後必須であるといえます。

<この記事に関するお問い合わせ先>
   弁護士 増山 健
  TEL: 06-6202-8536 
   E-mail: ken-masuyama@yglpc.com
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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同
・発行日:2016年11月2日発行

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