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YGLPCメールマガジン第37号(2015年6月30日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

 

        ★ YGLPCメールマガジン第37号 ★

 

          〜韓国の法律事情

           韓国の裁判制度 その他3記事〜

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             今号の目次

           

1.韓国の法律事情

  〜韓国の裁判制度〜

 

2.労働法最前線

  〜労働者派遣法改正の動向〜

 

3.スポーツ:スポーツ仲裁裁判所の判断と司法裁判所の判断の微妙な関係

 

4.インコタームズ2010についての一考察(3)

 

過去のバックナンバー

 http://www.yglpc.com/mailmag/index.html

 

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【韓国の法律事情】

  〜韓国の裁判制度〜

 

1 私は、2014年から1年間ソウルに留学し、現地のローファームで勤務して

おりましたので、現地での勤務経験を踏まえて、韓国の法律事情について記事を

書いていきたいと思います。第1回は、韓国の裁判制度についてご説明させて

頂きます。

 

2 韓国には、大法院(日本でいう最高裁判所)、高等法院、地方法院、特許法院、

家庭法院及び行政法院という6種類の法院(裁判所)が設置されています。

民事事件、刑事事件の審理は、原則として、日本と同じ三審制をとっていますが、

特許法、実用新案法、意匠法、商標法等に関連する事件及び行政事件は、それぞれ、

原則として、特許法院と大法院、行政法院と大法院の二審制をとっています。

 日本とは異なる点として、韓国には、法令又は処分の違憲審査をするための

憲法裁判所が設置されており、訴訟事件の係属する法院は、職権又は当事者の申立て

によって、憲法裁判所に対して、裁判の前提とすべき法令が違憲か否かの審判を

申し立てることができます(その他、憲法裁判所は、高位の公務員の罷免等を審理

する弾劾審判、政党解散審判、国家機関同士の権限についての争い等を審理する

権限争議審判、憲法請願審判等を行う権限を有しています。)。憲法裁判所は多くの

違憲判決を出すなど活発に利用されており、近時では、昨年12月の韓国の

統合進歩党という政党に対する解散命令や、今年2月の姦通罪の違憲判決など

私がソウルにいる間もニュースで大きく取り上げられていました。

 

3 このように、憲法裁判所がある点は日本と異なりますが、韓国の法体系は、

いわゆる大陸法系に属し、立法機関で制定された成文法令を基礎としています。

法制度の多くが日本の統治下で整備されたこともあり、法律の構成や法律用語、

解釈まで、日本の法制度と非常に近似したものとなっています。そのため、

韓国での訴訟において、韓国内で判例等の確立した見解がない問題については、

日本の判例や学説、大学教授の意見書等が提出されることが多く、私も、

ソウルのローファームでの勤務期間中、訴訟を担当している弁護士から、日本の

裁判例の調査を度々依頼されました。日本での裁判で裁判官から海外の参考判例を

出してほしいと言われた経験はまだありませんが、韓国の裁判では、裁判官から、

海外(特に法制度の似ている日本)の判例、学説等を参考に出して欲しいと依頼

されることも少なくないようです。

 

4 このように、韓国の裁判では、日本での法解釈の考え方が通用する場面が多いとは

言え、どちらかというと、日本の方が、法律の解釈論は進んでいるような印象を

受けましたが、韓国の方が日本よりも進んでいる点も多数あります。

 まず、第一に電子訴訟制度があげられます。韓国では2010年に「民事訴訟等に

おける電子文書の利用等に関する法律」が制定されました。専用のサイトで

利用登録を行い、利用者は、当事者や請求内容等をサイト上で入力し、証拠等は

PDFファイルで提出することが可能です。紙面で提出された書類も電子化されて

保存され、当事者は、裁判所のサイトから、訴訟記録の閲覧やダウンロードが

可能です。法廷でも、提出された書面は法廷内のスクリーンに映し出され、

裁判官や当事者だけでなく、傍聴人もこれを見ることが可能です。送達についても、

電子訴訟の利用に同意した場合、裁判所からメールで通知されます。

 また、大法院のサイトから様々な情報を取得することができ、例えば、

日本の民事再生手続にあたる韓国の回生手続では、債権者一覧や、債権者や

債務者がいつどのような書面を提出したかなどが大法院のサイトに掲載されており、

サイトを確認することによって事件の進行等を把握することも可能です。

 さらに、裁判制度自体ではありませんが、国家法令情報センターのサイトからは

韓国の現行法令が確認できるだけでなく、制定・改正の理由や、条文ごとの主要な

判例等も確認することができ、非常に使い勝手の良いものとなっています。

 このように、インターネットの利用による裁判手続の迅速化や情報公開などは、

間違いなく韓国の方が日本よりも先を行っていると言えるでしょう。

 

5 このように、韓国の法体系、解釈は日本とかなり似ている部分が多く、法令や

判例に関する情報も充実しているため、韓国法の解釈等の見通しを日本の弁護士が

行うことも、他の国に比較すれば、容易ということができます。当事務所では、

韓国法及びその解釈等の調査についても対応可能であり、また、必要に応じて

現地大手法律事務所と協力して案件を進めることが可能な体制をとっておりますので、

韓国との取引等でお困りのことがございましたら、お気軽にご相談下さい。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 金 大燁      

 TEL:    06-6202-7718

 E-mail: d-kin@yglpc.com

 

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【労働法最前線】

  〜労働者派遣法改正の動向〜

 

 労働政策審議会が、平成26年1月29日、厚生労働大臣に対し、労働者派遣制度の

改正について建議して以降、同年3月11日に労働者派遣法改正案(施行期日:平成27年

4月1日)が国会に提出されるも審議に入ることなく廃案となり、平成26年9月29日に

国会に再提出されるもまたしても廃案となるなど、労働者派遣法改正は難航しておりました。

 

 しかし、労働者派遣法改正案が、平成27年3月13日、国会に再々提出され、

同年6月19日午前、衆議院厚生労働委員会で賛成多数で可決され、同日午後、

ついに衆議院本会議でも可決され、成立する見込みとなりました。今後、参議院での

審議が行われますが、政府与党は、同年9月1日施行を目指しています。

 

 この改正労働者派遣法が施行されれば、全ての労働者派遣事業が許可制とされる他、

期間制限がかからない専門業務等のいわゆる「26業務」と、最長3年の期間制限がかかる

その他の業務との区別が廃止され、以下の制度が設けられます。

  (1)事業所単位の期間制限:派遣先の同一の事業所における派遣労働者の受入れは3年を

     上限とする。それを超えて受け入れるためには過半数労働組合等からの意見聴取が必要。

     意見があった場合には対応方針等の説明義務を課す。

  (2)個人単位の期間制限:派遣先の同一の組織単位(課)における同一の派遣労働者の

     受入れは3年を上限とする。

 

 他方で、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップ、雇用継続を推進するため、

以下の措置も講じられることになります。

  (1)派遣労働者に対する計画的な教育訓練や希望者へのキャリア・コンサルティングを

     派遣元に義務付け。

  (2)派遣期間終了時の派遣労働者の雇用安定措置(※)を派遣元に義務付け。

          ※派遣先への直接雇用の依頼、新たな派遣先の提供、派遣元での無期雇用、

            その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置

 

 以上のとおり、改正労働者派遣法が施行されれば、期間制限なく派遣労働者として

働き続けられていた専門業務の労働者は3年以内に職を失うことになる可能性があるため、

派遣労働者のための改正ではないとの反対の声も強いようです。これに対し、安倍首相は

改正案に盛り込んだ派遣労働者の雇用安定措置の意義を繰り返し強調しますが、野党からは

「実効性がない」と批判の声があがっています。

 

 今後の動向につき、有益な情報があり次第、適宜ご紹介させていただきます。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 佐藤 康行

 TEL:    06-6202-3460

 E-mail: y-sato@yglpc.com

 

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【スポーツ:スポーツ仲裁裁判所の判断と司法裁判所の判断の微妙な関係】

 

1 ドイツのスピードスケートの4大会連続のオリンピック金メダリスト クラウディア・

ペヒシュタイン選手は、2009年7月、バイオロジカル・パスポート(※注:スポーツ選手

の一定期間における生物学的マーカーを記録し、これを照合することでドーピングを

検知するドーピング検査手法。以下「BP」といいます。)が異常値を示していることを

理由に、国際スケート連盟(International Skating Union:以下「ISU」といいます。)

からドーピング違反として2年間の資格停止処分を下され、スポーツ仲裁裁判所

(Court of Arbitration for Sports:以下「CAS」といいます。)もこの判断を追認し、

資格停止の一時中断を求めて提訴したスイスの連邦裁判所にも訴えは退けられていました。

 

2 その後、ペヒシュタイン選手は、結局出場停止期間中の2010年に開催された

バンクーバーオリンピックには出場できなかったものの、出場停止期間を終えた後の

2014年開催のソチオリンピックに41歳で見事出場を果たしました(結果は3000メートルの

4位が最高)。その間、ISUに対して当該資格停止処分により被った損害の賠償を求めて

ドイツの司法裁判所に訴えを提起していましたが、2015年1月、ドイツの司法裁判所は、

CASにおける仲裁合意を「ドイツの独占禁止法に違反する」という理由によって無効とし、

ニューヨーク条約によっても司法裁判所を拘束しないとする判断を下しました。

 

3 このケースは、BPのみでドーピング違反を認定したISUやCASの判断を司法裁判所が

覆した初のケースであるとされ、CASにおける仲裁合意を独占禁止法に違反するとして

無効と判断した点も注目されています。

CASは、2015年3月、このドイツの司法裁判所の判断に対し、「仲裁合意に基づいて

実施された仲裁の判断を司法裁判所が覆すことができるとすれば、国際仲裁制度が

損なわれる」

などとして懸念を表明しました。

 

4 本件については、ISUが上訴しており、今後、ドイツの司法裁判所の判断に注目が

集まっていますが、このケースのほかにも、ドイツでは、サッカークラブチームに

対する国際サッカー連盟(FIFA)の制裁についてのCASの判断を無効としたものもあり、

また、アメリカやスイスでも仲裁判断が司法裁判所によって覆されるという事例が

出てきています。

 

 事例が集積されることによってさらに議論が深まると思われますが、この問題は、

CASのコメントにもあるとおり、スポーツ仲裁制度の根幹そのものに深く関係する

重大な問題であると考えられており、注目を集めているところですのでご紹介する

次第です。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 石原 遥平      

(公益財団法人日本スポーツ仲裁機構(JSAA)仲裁人・調停人候補者)

 TEL:   03-6267-1216

 E-mail: y-ishihara@yglpc.com

 

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【インコタームズ2010についての一考察(3)】

 

 「インコタームズ(Incoterms)2010」については、本メールマガジン第25号

及び第26号においても若干の検討を加えましたが、掲載後にご質問を受けた事項

なども踏まえながら、今回は、CFR条件を例として、検討を行いたいと思います。

 

1 はじめに

 インコタームズ2010では、11の規則を定めていますが、これらの規則は、

二つの種類に分かれます。

(1)まず、「いかなる単数又は複数の輸送手段にも適した規則」であり、

EXW、FCA、CPT、CIP、DAT、DAP及びDDPの7規則がこれに該当します。すなわち、

これらの規則は、輸送経路の全てが陸路である場合にも用いることができますし、

その全部又は一部に船が使用される場合にも用いることができますので、

「door-to-door」運送全般に使うことできる、ということができます。

(2)もうひとつは、「海上及び内陸水路輸送のための規則」であり、

FAS、FOB、CFR及びCIFの4規則があります。これらの規則は、文字どおり、

輸送経路の全てで船が使用される場合(船による「port-to-port」運送の場合)

にのみ使用することができます。

 したがって、「航空機輸送には、FOB条件は使用することができない」

ということになります。

 

2 CFR(運賃込)条件を例として

 CFRとは、Cost and Freightの略語であり、売主は、(i)本船の船上で物品を引渡すか、

又は、(ii)既にそのように引渡された物品を調達する義務を負います。また、売主は、

指定仕向港へ物品を運ぶために必要な契約を締結し、そのための費用と運賃を

負担する義務を負います。

 CFRは、CIF(運賃保険料込)条件から「保険」の部分がなくなった条件ですので、

ポイントは、CIF条件とほぼ同様です。

 なお、「インコタームズ1980」までは、「C&F(Cost and Freight)」という規則が

存在しましたが、「インコタームズ1990」以降では、「CFR」条件に変更されています。

 現在でも、貿易条件を「C&F」条件として定める契約書が締結される例がありますが、

現在の「CFR」条件とは内容が異なりますし、売主・買主間でそれぞれの権利義務の

解釈につき紛議が生じる原因にもなりかねませんので、「インコタームズ1980に基づく

C&F条件による」旨を契約書で明記しない限り、「C&F」条件を使用することは望ましくは

ないと思料されます。

 また、CFR条件のみならず、他の条件についても、インコタームズの各改訂版によって、

その内容が異なりますので、契約書においては、「どのインコタームズに準拠するのか」

ということも明記する必要があります。

この点について、販売店契約など、その契約の締結後、その契約に基づいて複数の

個別売買契約が締結されることが予定されている契約において、「本契約において

“FOB”の用語は、インコタームズ2010(及びその改訂版)によって解釈される」

という規定が設けられることがあります。

 インコタームズは、近年、10年間隔で改訂されていますので、これまでと同様に

改訂がなされれば、今後、「2020年版」が作成される可能性があります。しかし、

将来の改訂内容を予想することは難しく、「FOB」などの条件を「インコタームズの

最新版で解釈する」という条件が、自らに有利になるか不利になるかということを

予想することも困難です。

 一般的に、長期間に亘り適用されることを予定された契約については、時間の経過

とともに条項を修正する必要性が生じることがあることからすれば、今後そのような

契約を締結する場合には、「インコタームズ2010により解釈される」とのみ規定し、

インコタームズが改訂された場合において、その改訂版に基づいて解釈することが

望ましいという判断になったときに、相手方と協議した上で、変更契約を締結する

といった措置を講じることが無難な対応であると考えることもできます。

 

3 小括

 インコタームズは、売主・買主の権利義務の一部を取り決めるルールではありますが、

このルールを使用するかどうかは、売買当事者に委ねられています。

 インコタームズは、上手に使用すれば、契約交渉の手間が劇的に改善されますが、

規則が多数存在し、且つ、最近では10年毎に改訂がされています。売買当事者は、

使用する輸送手段を踏まえて、これから行う取引に適切な取引条件を、取引毎に

検討することが望ましいと思料されます。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 大場 規安

 TEL:   03-6267-1227

 E-mail: n-oba@yglpc.com

 

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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同

・発行日:2015年6月30日発行

 

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