トピックス
2014年06月30日
YGLPCメールマガジン第25号(2014年6月30日発行)
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弁護士法人淀屋橋・山上合同
★ YGLPCメールマガジン第25号 ★
〜 平成26年改正金商法の公布、労働法最前線
その他4記事〜
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今号の目次
1.平成26年改正金商法の公布
―虚偽記載等に係る損害賠償責任の見直し、大量保有報告の提出者の負担軽減へ―
2.労働法最前線
―労働安全衛生法の改正によりストレスチェックの実施が義務付けられました―
3.シンガポール労働法改正
―FCF規制によりシンガポールに日本人駐在員を自由に送れなくなるのか?―
4.インコタームズ2010についての一考察
―「インコタームズ2010」について、契約書作成の観点から若干検討したいと思います―
5.世界アンチ・ドーピング規程の改訂
―「アンチ・ドーピング」について、ご説明いたします―
6.セミナーのご案内
『YGLPC連続セミナー 事業承継の実務』
過去のバックナンバー
https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html
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【平成26年改正金商法の公布】
虚偽記載等に係る損害賠償責任の見直し、大量保有報告の提出者の負担軽減へ
「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第44号)が平成26年5月23日に成立し、同月30日に公布されました。平成26年改正金商法では、投資型クラウドファンディングの利用促進のための参入要件の緩和と投資者保護ルールの整備に関する改正がなされました。
また、無過失責任とされていた虚偽記載等のある開示書類の提出会社の流通市場における取得者に対する損害賠償責任(金商法第21条の2)について、過失責任(但し、提出会社が無過失であることの立証責任を負います)に改正されました。
さらに、大量保有報告の提出者の負担軽減を図るために、(1)自己株式に係る大量保有・変更報告書の提出義務の廃止(改正金商法第27条の23第4項)、(2)短期大量譲渡報告の記載事項の見直し(改正金商法第27条の25第2項)、(3)変更報告書の同時提出義務の廃止(金商法第27条の25第3項の削除)、(4)大量保有報告書等の発行体への送付を不要とする改正(改正金商法第27条の30の6第3項)等がなされました。
その他、平成26年改正金商法では、有価証券報告書等の提出時における訂正発行登録書の提出の見直し(改正金商法第23条の4)等多岐に亘る改正がなされており、原則として、公布の日から起算して1年を超えない範囲内にて政令で定める日に施行されることとなっておりますので、今後公表が予定される政府令・ガイドラインの改正内容と併せて、その内容に留意が必要です。
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 井 口 敦
TEL: 03-6267-1232
E-mail: a-iguchi@yglpc.com
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【労働法最前線】
労働安全衛生法の改正によりストレスチェックの実施が義務付けられました
平成26年6月19日、第186回通常国会において、労働安全衛生法の一部を改正する法律案が可決されました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000049191.html
同改正の内容は、
(a)化学物質管理のあり方の見直し、
(b)心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施、
(c)受動喫煙防止対策の努力義務化、
(d)重大な労働災害に対する特別安全衛生改善計画の策定等、
(e)外国に立地する検査機関等への対応、
(f)規制・届出の見直し等
ですが、本稿では、このうち(b)の「心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施」についてご紹介します。
今回の改正により、「常時50人以上の労働者を使用する事業場」には、心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施することが義務付けられました(50人以下の労働者を使用する事業場についても、努力義務が課せられています)。
「常時50人以上の労働者を使用する事業主」は、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者による検査を実施しなければなりませんが、その検査結果は労働者に直接通知され、労働者の事前の同意が無ければ、検査結果を入手することはできません。
更に、労働者から申出があれば、医師による面接指導を受けさせなければなりませんし、必要に応じて医師の意見を勘案の上、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じなければなりません。
「50人以上」という基準は、産業医と同様に、企業単位ではなく、事業場単位で判断しますので、例えば従業員総数が50人以上であっても、事業所単位で50人未満であれば、検査を実施する法的義務はありません。但し、産業医等に関する行政通達によれば、「50人以上」か否かは、いわゆる正社員のみならず、契約社員やパート、アルバイト、派遣社員を含めた人数で判断されますので、注意が必要です。
この検査等は、施行日(公布日から1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日)から実施しなければならず、それまでに対策しておく必要がありますが、検査を実施できる者や検査結果の通知の方法等の詳細は、厚生労働省令に委ねられておりますので、今後も継続してご紹介して参ります。
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 白 石 浩 亮
TEL: 06-6202-3324
E-mail: k-shiraishi@yglpc.com
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【シンガポール労働法改正】
FCF規制によりシンガポールに日本人駐在員を自由に送れなくなるのか?
2014年8月1日以降、シンガポールで、外国人労働者のために就労ビザを申請する場合は、申請の前に、当該外国人労働者に対する労働条件と同等の条件のシンガポール人に対する求人広告を、シンガポール労働力開発庁が運営するJob Bankと呼ばれる求人募集サイトに、最低14日間掲載することが義務付けられます。このFair Consideration Framework(FCF)規制は、日系企業が日本の本社からシンガポール子会社に対して駐在員を送る場合にも適用され、大きなインパクトを有するものですので、その内容を概観します。
次のコラム記事をご参照下さい。
コラム
https://www.yglpc.com/wp/column/201410.html
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 大 林 良 寛
E-mail: y-obayashi@yglpc.com
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【インコタームズ2010についての一考察】
インコタームズ2010について、契約書作成の観点から若干検討したいと思います
「インコタームズ(Incoterms)」は、物品売買契約における取引条件の国際標準規則で、国際商業会議所(International Chamber of Commerce。以下「ICC」といいます。)が制定したものです。
International Commercial Termsは、略して「Incoterms(インコタームズ)」と呼ばれ、具体的には、主として売主から買主への物品の引渡に伴う役割、費用及び危険について定めています。
最新のインコタームズである「インコタームズ2010」も、2011年1月1日の発効後3年以上が経過しました。インコタームズ2010の各規則の内容については、数多くの文献が存在しますので、そちらをご参照いただくことといたしまして、今回は、インコタームズ2010について、契約書作成の観点からポイントとなり得る点をご説明させていただきます。
(1)物品の所有権の移転時期は、規定されていません
インコタームズでは、従前より、危険の移転時期については規定されていますが、物品の所有権の移転時期については規定されておらず、インコタームズ2010においても規定されていません。
したがって、売買の対象物品の所有権移転時期については、売買契約書の条項や当該売買契約を規律する法律によって定められることになりますが、所有権移転時期を明確にするためには、まず、売買契約書において明記する必要があります。
(2)国内売買取引へも適用可能です
インコタームズは、これまでは主として国際売買取引において用いられてきましたが、インコタームズ2010は、国際売買取引のみならず、国内売買取引にも適用可能であることを認めています(例えば、インコタームズ2010は、EXW(工場渡)は「国内取引に適している。一方で、FCA(運送人渡)は、通常、国際取引に一層適している。」と明記しています。)。
そして、インコタームズ2010には、輸出及び輸入手続に関する義務については、「適用できる場合には」という文言が付され、「適用できる場合(つまり、輸出入の場合)にのみ当該義務が存在すること」が明らかにされています。
(3)インコタームズを変更することを、ICCは推奨していません
売買の当事者が、インコタームズの内容を特約により変更することは可能です。
しかし、インコタームズを変更することについては、それを制定したICCが「そうすることには危険がある。」としています。
すなわち、インコタームズ2010では、インコタームズを変更する場合には、当事者間で、「どの部分を変更し、どの部分を変更しないのかという点」について誤解が生じる可能性があるため、「当事者は、かかる変更の意図する効果を契約で非常にはっきりさせることが必要である。」としています。
今後も、インコタームズのみならず、英文契約書作成時における悩ましい点や隠れた論点について、本メールマガジンを通じて、都度ご説明をさせていただきます。
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 大 場 規 安
TEL: 03-6267-1227
E-mail: n-oba@yglpc.com
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【世界アンチ・ドーピング規程の改訂】
「アンチ・ドーピング」について、ご説明いたします
スポーツ振興法の施行から半世紀余り。平成23年8月に同法の全面改正によってスポーツ基本法が制定され、スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことが基本的な権利として認められるに至りましたが、少しでも多くの皆さんにドーピングに関する理解を深めて頂きたいと思い、このテーマを取り上げました。
「アンチ・ドーピング」とは、競技力を高めるために禁止された薬物や方法を使用せず、公正で公平なスポーツに参加するというアスリートの権利を守り、人間の可能性を極限まで追求するスポーツの価値を守る活動です。日本ではあまり馴染みがない言葉ではありますが、世界のスポーツ界ではドーピング廃絶に向けた様々な取り組みがなされており、日本も2020年に東京オリンピックが開催されることになったこともあって、トップアスリートに限らず、未来のスポーツ界を担う学生達に理解・実践してもらおうという動きが活発になっています。
そのような中、世界アンチ・ドーピング機構(WADA(World Anti-Doping Agency))が定める世界アンチ・ドーピング規程(2009年最終改訂)が今年、改訂されました。今回の改訂では、規程の内容をより分かり易く、かつ、短くすると共に、スポーツのインテグリティー(高潔性)を保つために、単なる情報提供から教育・予防プログラムへシフトしていくことを明示しました。また、アスリートのより明確な厳格責任と役割・責務が定められ、サポートスタッフに対する厳格な制裁も強調されることになりました。日本語訳は今年10月に公表される予定ですが、これに合わせて、日本アンチ・ドーピング規程も改訂される見込みです。
規程内容の詳細は、日本アンチ・ドーピング機構(JADA(Japan Anti-Doping Agency))のホームページ(http://www.playtruejapan.org/ )をご参照ください。
今後、益々スポーツを取り巻く環境は変化していくと思われますので、随時本メールマガジンや執筆活動を通して情報提供をさせていただきます。
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 石 原 遥 平
(公益財団法人日本スポーツ仲裁機構(JSAA)仲裁人・調停人候補者)
TEL: 03-6267-1216
E-mail: y-ishihara@yglpc.com
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【YGLPC連続セミナー開催のお知らせ】
『事業承継の実務』
当法人において、「YGLPC連続セミナー」を定期的に開催させていただいておりますが、第4回として、平成26年10月8日に、「事業承継の実務」をテーマとして、当法人の上甲悌二弁護士及び蜷川敦之弁護士がセミナーを開催いたします。
上記セミナーの詳細・お申込みついては、以下よりお願いいたします。
お気軽にご参加ください。
https://www.yglpc.com/wp/news/20140114.html
<上記セミナーに関するお問い合わせ先>
弁護士 蜷 川 敦 之
TEL: 06-6202-4163
E-mail:a-ninagawa@yglpc.com
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