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2012年02月29日
YGLPCメールマガジン第7号(2012年2月29日発行)
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★ YGLPCメールマガジン第7号(2012年2月29日発行)
〜最高裁が初めて「パブリシティ権」を法的権利として認めました
(ピンク・レディー事件)その他2記事〜
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発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同
今号の目次
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1.知財判例速報(ピンク・レディー事件)
最高裁が初めて「パブリシティ権」を法的権利として認め、その侵害
となる場合の基準を定立しました。
2.労働法最前線
パワーハラスメントの行為類型が示されました。
3.相続法分野のこれから
両親が婚姻していないときの子どもの差別は合憲か?
過去のバックナンバー
https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html
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【知財判例速報】
雑誌記事で写真を無断で使用され「パブリシティ権」を侵害されたとして
歌手のピンク・レディーが発行元に対して損害賠償を求めた事件において、
最高裁が初めて「パブリシティ権」を法的権利と認め、その侵害となる場合
の基準を定立しました。
最高裁は、「パブリシティ権」を「(著名人などの)商業的価値に基づく人
格権のひとつで、顧客吸引力を排他的に利用する権利」と定義する一方、著
名人は社会の耳目を集めるなどして、その肖像を時事報道、論説、創作物等
に使用されることもあるのであって、その使用を正当な表現行為等として受
忍すべき場合もあると指摘しました。
その上で、肖像等の無断使用が「パブリシティ権」侵害になる具体的ケー
スとして、
(1)肖像それ自体を鑑賞対象とする商品に使う、
(2)商品の差別化に使う、
(3)商品の広告として使う
など「専ら顧客吸引力の利用を目的とする場合」との基準を定立しました。
本件の雑誌記事は、タレントがピンク・レディーの5曲の振り付けを利用
したダイエット法を解説するという内容であり、ピンク・レディーの14枚
の白黒写真が使用されているものでしたが、タレントがピンク・レディーの
振り付けを真似ていた思い出を紹介するという内容であったこと、200頁
の雑誌のうち3頁でしか使用されていなかったこと、いずれも白黒写真であ
ること、サイズも小さいものであったことなどから、専ら肖像の有する顧客
吸引力の利用を目的とするものとはいえず、「パブリシティ権」侵害にあたら
ないとしました。
「パブリシティ権」は、それまで下級審において一定範囲で認められてい
たものの、明確な法的位置付けはなく、今回の最高裁判決は、初めて「パブ
リシティ権」が法的権利であることが認めたものであり、しかも、その侵害
となる場合の基準を定立し、具体的な判断を示した点で意義があります。
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 野中 啓孝
TEL: 06-6202-4164
E-mail:h-nonaka@yglpc.com
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【労働法最前線】
パワーハラスメントの行為類型が示されました。
いわゆるパワーハラスメントについて、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌
がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」は、平成24年1月3
0日、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の
優位性(※)を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を
与える又は職場環境を悪化させる行為(※上司から部下に行われるものだけ
でなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位
性を背景に行われるものも含まれる。)」を「職場のパワーハラスメント」と
呼ぶことを提案しました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021hkd.html
また、職場のパワーハラスメントの行為類型として、
(a)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(b)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
(c)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(d)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事
の妨害)
(e)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕
事を命じることや仕事を与えないこと)
(f)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
を例示列挙しました。
予防策として、トップによる反パワーハラスメントのメッセージ発信や就
業規則への規定、アンケートによる実態把握、従業員研修などが挙げられて
います。
円卓会議は今後、さらなる議論を行い、本年3月を目途に、この問題の予
防・解決に向けた提言を取りまとめる予定ですので、そちらの方もご注目く
ださい。
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 岡筋 泰之
TEL: 06-6202-3359
E-mail: h-okasuji@yglpc.com
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【相続法分野のこれから】
両親が婚姻していないときの子どもの差別は合憲か?
最近、愛し合っているにもかかわらず婚姻はしないという男女が増えてき
ているように思われますが、あなたはこのような男女のことをどう思います
か?
「個人の自由では?」というご意見も多いかと思います。
しかし、個人の自由で婚姻をしなかった結果、そのような男女の間に生ま
れてきた子どもが、「法律上」差別されるとしたらどうですか?
現行民法900条4号ただし書前段(以下「本件規定」といいます。)は、
法律婚関係にない両親の間に生まれた子どもの相続分は、法律婚関係にある
両親の間に生まれた子どもの相続分の2分の1と定めています。
もっとも、両親が婚姻関係にあるかということは、生まれてくる子どもに
とっては、自分自身の意思や努力ではいかんともし難い事柄です。
そこで、古くから本件規定は法の下の平等を定める憲法14条1項に反し
無効ではないかという議論がされてきましたが、最高裁は、現行民法が法律
婚主義を採用している以上、法定相続分について、法律婚関係にある配偶者
やその子どもを優遇することは合理的であると述べ、一貫して有効と判断し
てきました。
ところが、平成23年12月21日、名古屋高裁は、被相続人がそれまで
一度も法律婚をしたことがない段階で、事実婚関係にある相手方との間に子
どもが生まれた場合、当該子どもとの関係で本件規定を適用することに合理
性を認めることは重大な疑いがあると判示しました。
また、この裁判例が出される少し前の平成23年8月24日には、大阪高
裁が、名古屋高裁のような限定をすることなく本件規定を違憲無効と判断し
ました。
これらの裁判例も指摘するように、日本では、核家族化などの少子高齢化
に伴い家族形態は変化してきており、近年は事実婚や非婚など男女の共同生
活のあり方も一様なものではなくなってきています。
また、そのような共同生活のあり方を受け入れる傾向が現れてきているこ
とも確かです。
そうすると、今後、このような裁判例を踏まえ、さらに活発な議論がなさ
れるものと思われます。
<この記事に関するお問い合わせ先>
弁護士 佐藤 康行
TEL: 06-6202-3460
E-mail: y-sato@yglpc.com
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