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YGLPCメールマガジン第3号(2011年10月27日発行)

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★ YGLPCメールマガジン第3号(2011年10月27日発行)
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                      発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同

            今号の目次
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 1.『企業のための労働契約の法律相談』のご案内

    当事務所の渡邊徹弁護士、木村一成弁護士が編者・執筆者として、吉田豪弁護士、
   白石浩亮弁護士が執筆者として参画した書籍が刊行されます。

 2.金融・執行分野の新判例

    債権回収に万全を期すためには、平時から債務者等の主要な預金先金
   融機関・店舗の把握に努めることが重要です。
  【ご紹介する判例】平成23年9月20日最高裁第三小法廷決定

 3.契約交渉に役立つ独禁法の基礎知識Vol.1

    契約交渉を有利に進めるのに有益だと考えられる独禁法の基礎知識を
   ご紹介いたします。

 過去のバックナンバー
 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

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【『企業のための労働契約の法律相談』のご案内】

  当事務所の渡邊徹弁護士、木村一成弁護士が編者・執筆者として、吉田豪弁護士、
 白石浩亮弁護士が執筆者として参画した『企業のための労働契
 約の法律相談』が、平成23年10月28日、青林書院から発行されます
 (本体価格は6,000円、税込価格は6,300円)。

  企業が直面する労働問題のほとんどをカバーする130問について、労働
 問題に通暁した第一線の弁護士が解説を加えています。

<この記事に関するお問い合わせ先>
 弁護士 渡邊 徹
   TEL: 06-6202-4460
   E-mail: t-watanabe@yglpc.com

 弁護士 木村 一成
   TEL: 06-6202-3393
   E-mail: k-kimura@yglpc.com

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【金融・執行分野の新判例】
最高裁平成23(許)第34号同23年9月20日第三小法廷決定
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81634&hanreiKbn=02

 (1) 差押対象債権の特定と支店の特定

   債権に対する強制執行の申立てにあたっては、差押えの対象となる債
  権を特定しておく必要があります。

   これは、第三債務者の便宜を図るため、つまり、第三債務者は、どの
  債権が差し押さえられたのかを識別し、当該債権については、弁済禁止
  効が生じていること等に対応する必要があるためです。

   預金(預金債権)については、従来、銀行等が本店又は支店ごとに預
  金管理をしてきたことから、預金債権に対する強制執行の申立てにあた
  っては、債務者が預金している金融機関を支店名まで特定したうえで申
  立てることが一般的でした。

   しかし、近時、金融機関は、預金管理システムの進歩により、全店を
  一括して預金管理をすることが可能となり、本店又は支店まで特定しな
  くても、金融機関の支店の全店舗を対象に、順位付けをして申立てれば、
  預金債権の特定として十分ではないかという考えも有力になり、下級審
  の裁判例も分かれていました。

 (2) 本決定の意義

   本決定は、この問題について、最高裁として、初めて判断を示したも
  のです。

   つまり、最高裁は、一般論として、差押債権の特定は、第三債務者が
 
  「直ちにとはいえないまでも、(弁済禁止等の)差押えの効力が送達の時
   点で生ずることにそぐわない事態とならない程度に速やかに、かつ、
   確実に、差し押さえられた債権を識別することができるものでなけれ
   ばならない」

  としたうえ、当該事例における大規模な金融機関の全ての店舗を対象と
  して順位付けをする方式による預金債権の差押命令の申立ては、差押債
  権の特定を欠き不適法である旨を決定しました。

   本決定は、債権者は、少なくとも大規模な金融機関を第三債務者とし
  て、債務者の預金債権を差し押さえる場合、全店舗を対象として順位付
  をする方式によることはできないことを明らかにした点及び差押債権特
  定の意義・程度を明らかにした点に意義があります。

   もっとも、本決定は、金融機関が弁護士法23条の2照会に回答しなか
  ったためやむなく全店一括順位付方式によった事案で当該申立を適法と
  判断した裁判例(東京高決平成23年6月22日金法1926号124頁)の判
  断まで直ちに否定するものとまではいえず、また、本決定は、大規模な
  金融機関である第三債務者に対し、全店一括順位付方式によった場合を
  前提とするものである点に留意する必要があります(例えば、店舗数の
  多くない金融機関で、しかも全店ではなく店舗数をしぼって順位付をし
  て差押えの申立てをした場合について、本決定は何も判断しておらず、
  今後の具体的判断に委ねられています。)。

   緊急性を要する差押段階においては、債務者がどの金融機関のどの支
  店に、預金債権を有しているかまで特定することは困難な場合も多いと
  思われますので、平時から債務者等の主要な預金先金融機関・店舗の把
  握に努め、回収に備えることが重要となります。

<この記事に関するお問い合わせ先>
 弁護士 蜷川 敦之
   TEL: 06-6202-4163
   E-mail: a-ninagawa@yglpc.com

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【契約交渉に役立つ独禁法の基礎知識Vol.1】

  相手方から一方的で不合理な契約条項を突き付けられたり、自社の
 契約書雛形の条項が独禁法に違反していると指摘され、修正を求めら
 れたりしたことはありませんか。

  このコラムでは、知っていれば契約交渉で有益だと思われる独禁法
 の基礎知識をシリーズでご紹介いたします。
 
  初回は、「そもそも日本の独禁法に違反すると、どのようなリスク
 があるのか」という点をご紹介します。

 (1) 行政上のリスク(排除措置命令、課徴金納付命令、警告、注意、
   指名停止等)

    公正取引委員会(公取委)は、独禁法違反行為があるときは、違
   反事業者に対し、当該行為の差止め、再発防止のための対策実施な
   どを内容とする排除措置命令を発することができます。
   次の公取委の報告では、平成22年度の法的措置件数は12件です。
       http://www.jftc.go.jp/pressrelease/11.june/110601hontai.pdf
   

    また、公取委は、独禁法違反行為が、不当な取引制限、私的独占
   及び一定の不公正な取引方法である場合には、違反事業者に対し、
   課徴金という金銭的な不利益を課します(平成22年度の課徴金額は
   1事業者当たり4億6209万円)。

    なお、公取委は、排除措置命令等の法的措置を取らない場合でも、
   「警告・注意」を行い、また「警告・注意」を行った事実を公表す
   ることがあります。

    さらに、談合などの独禁法違反行為については、公共工事におい
   て指名停止や指名取消しがなされることもあります。

 (2) 刑事上のリスク(個人に対する懲役等及び法人に対する罰金)

    独禁法違反行為を行った場合、刑事罰を受ける場合があります。
   例えば、私的独占、不当な取引制限の禁止に違反した場合には、違
   反を行った個人には5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が、法
   人には5億円以下の罰金が科せられます。

 (3) 民事上のリスク(損害賠償請求、差止請求、株主代表訴訟)
   
    独禁法に違反する契約条項は、公序良俗に反する場合には無効と
   なりますが、それだけでなく、次のような民事上のリスクも孕んで
   います。

   ア 独禁法違反行為については、独禁法25条又は民法709条に基
    づく損害賠償責任を負う場合があります(独禁法25条の場合は、
    排除措置命令等の確定後)。

     例えば、最近では、平成23年9月15日に福岡地方裁判所が、
    大手コンビニの値下げ販売制限行為を独占禁止法違反と認めて、
    損害賠償を命じたことが報道されています(判決文未入手。大手
    コンビニ側の控訴の意向が報道されています)。

   イ また、不公正な取引方法については、独禁法24条に基づく差
    止請求が認められる場合があります。差止請求の制度は平成12
    年に創設されたのですが、本年3月30日、同制度創設以来初め
    て、東京地裁は独禁法24条による差止請求を認容しました。

   ウ 株式会社が独禁法違反行為を行い、それにより株式会社に損害
    が生じた場合には、株主は取締役に対し、株主代表訴訟を提起す
    ることもあります。

  次回以降は個別の契約条項について、独禁法違反のリスクをご紹介
 する予定です。

<この記事に関するお問い合わせ先>
 弁護士 森田 博
 TEL: 06-6202-3542
 E-mail: h-morita@yglpc.com

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