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YGLPCメールマガジン第1号(2011年8月11日発行)

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★ YGLPCメールマガジン第1号(2011年8月11日発行)
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                      発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同

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            今号の目次
            ──────

  1.労働法最前線
   「労働者」ってなんだ?

 2.賃貸借最新判例
    
  (1) 敷引金の額が月額賃料の3.5倍程度であっても、有効とする
         最高裁判決が出ました。

  (2) 更新料条項(更新期間1年、賃料2か月分)を有効とする
     最高裁判決が出ました。

  3. はじめよう!英文契約書ドラフティング ☆マメ知識編☆ Vo.1
   「ウィーン売買条約」ってなんですか?
 
■─────────────────────────────
【労働法最前線】

  本年4月12日、労働組合法上の「労働者」に関する高裁の判断を
 覆す二つの最高裁判決が出されました(新国立劇場運営財団事件、
 INAXメンテナンス事件)。

  これらは、出演基本契約に基づく合唱団員及び業務委託契約に基づ
 く設備修理のエンジニアについて、労働基準法の労働者と同じような
 枠組みで判断した高裁判決を破棄し、広く労組法上の労働者であるこ
 とを認めたものです。

  この点、最高裁は明確な規範を提示せずに個別的具体的判断によっ
 たため、どのような場合に会社に団体交渉等を求めうるのかが必ずし
 も明確ではありませんが、雇用契約関係にない技術者等が、事業組織
 に組み込まれ、条件が一方的に決定され、報酬に対価性があるなどし
 て、実質的に団体交渉の保護を及ぼす必要がある場合は、労組法上の
 労働者と判断される可能性があると考えられます。

  なお、7月25日には、労使関係法研究会が、これらの最高裁判断を
 受けて、はじめて労組法上の労働者性の判断基準を示すに至りました
 ので、こちらをご参照ください。
  http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001juuf.html
 
 新国立劇場運営財団事件
 http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81241&hanreiKbn=02

 INAXメンテナンス事件
 http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81243&hanreiKbn=02

<この記事に関するお問い合わせ先>
 弁護士 渡邊 徹
  TEL: 06-6202-4460
  t-watanabe@yglpc.com

■─────────────────────────────
【賃貸借最新判例(1)】−平成23年7月12日最高裁判決−

(事案)

  月額賃料17万5000円(更新後は17万円)の居住用建物の賃貸借契
 約につき、保証金100万円のうち60万円を敷引とする敷引特約が消費
 者契約法10条により無効となるかが争われた事案です。

(裁判所の判断)

  最高裁判所第三小法廷は、「賃貸人が契約条件の一つとしていわゆる
 敷引特約を定め、賃借人がこれを明確に認識した上で賃貸借契約の締
 結に至ったのであれば、(中略)敷引特約は、敷引金の額が賃料の額等
 に照らし高額に過ぎるなどの事情があれば格別、そうでない限り、こ
 れが信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するもの
 ということはできない」という一般論を述べました。

  その上で、

  ・本件敷引金は建物明渡し後も賃借人に返還されないことが明確に
   読み取れる条項が置かれていたこと、
  ・敷引金の額が月額賃料の3.5倍程度にとどまっていること、及び
  ・近傍同種の建物に係る賃貸借契約に付された敷引特約における敷
   引金の相場に比して大幅に高額であるともいえないこと

 を理由に、当該事案の敷引特約は消費者契約法10条により無効であ 
 るとはいえないと判示しました。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81499&hanreiKbn=02

(解説)

  本判決は、本年3月24日の最高裁判所第一小法廷判決に引き続き、 
 敷引特約が消費者契約法10条により無効であるとはいえないとする
 ものであり、敷引特約に対する最高裁判所の判断が明らかになってき
 たものといえるでしょう。

【賃貸借最新判例(2)】−平成23年7月15日最高裁判決−

(事案)

  月額賃料3万8000円、契約期間1年の居住用建物の賃貸借契約に
 つき、更新料の額を賃料の2か月分とする更新料条項が消費者契約法
 10条ないし借地借家法30条により無効となるかが争われた事案です。

(裁判所の判断)

  最高裁判所第二小法廷は、「更新料は、一般に、賃料の補充ないし前
 払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を
 有するものと解するのが相当である。」、「賃貸借契約書に一義的かつ具
 体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約
 が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限
 り、消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則
 に反して消費者を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが
 相当である。」という一般論を述べました。

  その上で、当該事案の更新料条項は契約書に一義的かつ明確に記載
 されており、また、更新料の額を賃料の2か月分とし、賃貸借契約が
 更新される期間が1年間であることからすれば特段の事情はないとし
 て、消費者契約法10条ないし借地借家法30条により無効であるとは
 いえないと判示しました。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81506&hanreiKbn=02

(解説)
  
  裁判所は、本件事案の更新料条項については、

 ・期間満了の60日前までの申出により契約を更新できる、
 ・法定更新であるか合意更新であるにかかわらず更新料を支払う義務
  がある、
 ・入居期間にかかわりなく更新料の返還、精算等には応じない旨の条
  項がある

 という事実認定がなされており、「一義的かつ明確」という要件に関し
 て、一つの参考となるでしょう。

<この記事に関するお問い合わせ先>
                                   
 弁護士 小坂田 成宏  弁護士 柴田 昭久    弁護士 金 大燁
 TEL: 06-6202-0650  TEL: 06-6202-0877    TEL: 06-6202-3402
 n-osakada@yglpc.com a-shibata@yglpc.com  d-kin@yglpc.com

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【はじめよう!英文契約書ドラフティング ☆マメ知識編☆ Vo.1】
 
  英文契約書初心者のための連続マメ知識講座です。
  新入社員の契約つくる氏が、会社の顧問弁護士英文契子へ英文契約
 書に関する素朴な質問を投げかけます。
  今回は、「ウィーン売買条約」についての質問です。

>つくる氏
 「ウィーン売買条約ってよく聞くのですが、これってなんですか?」
  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>契子弁護士
 「ウィーン売買条約とは、「国際物品売買契約に関する国連条約
 (United Nations Convention on Contracts for the International
 Sale of Goods」のことで、略称「CISG」とも呼ばれています。
 日本は、これを批准し、2009年8月1日から発効しています。」

>つくる氏
 「批准して発効ってどういうことでしょうか?」
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>契子弁護士
 「この条約は自動執行条約といいまして、条約の内容を、別途、国家
 法として制定しなくともそのまま国内で適用される条約ですので、
 日本でも効力を生じ、本条約の対象範囲の契約に適用されるというこ
 とです。」

>つくる氏
 「私が今つくっているスペインに営業所のあるA社に、わが社の主力
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 商品である機械部品を売却する契約は、準拠法を日本法とする予定で
  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 すが、この契約にも適用されるのですか?」
  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

>契子弁護士
 「日本もスペインも条約加盟国ですし、日本法よりもCISGが優先して
 適用されますので、当事者間に合意のない事項でCISGが規定している
 事項であれば日本法ではなく、CISGが適用されます。

  例えば、検品についてですが、契約書に特に規定がない場合、日本
 法では、商人間では直ちに検査して瑕疵や数量不足を発見して通知し
 なければならず、隠れたる瑕疵でも6ヶ月以内に通知しなければ、契
 約の解除、又は代金減額請求若しくは損害賠償請求ができないことに
 なっています(商法526条)。 

  しかし、CISGでは物品の不適合(a lack of conformity of
 goods)を発見したとき又は発見し得たときから2年以内に通知すれば、
 物品の不適合に基づく権利を主張できる可能性があり、日本法の規定
 とは内容が異なります。

  ですので、その点は準拠法を日本法にしたからといって、安易に
 日本の商法が適用されると考えてはいけません。」

>つくる氏
 「うちの機械部品の性質から考えて、2年は長すぎますよ。どうにか
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 できないですか」
   ~~~~~~~~~~~~~~

>契子弁護士
 「であれば、その点はクレーム期間を短縮して合意すればよいのです
 よ。CISGよりも、当事者の合意が優先しますから。」

>つくる氏

 「では、早速契約書のドラフトにその点を加えて、交渉してみます!
  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 どんな条項を入れればよいのでしょうか?」
  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

>契子弁護士

 「そうですね、単純に、当該契約にCISG全体の適用を排除するので
 あれば、準拠法を日本法と規定する条文の中で、
 
 ”This contract shall be governed by the laws of Japan, excluding
  the United Nations Convention on Contracts for the International
  Sale of Goods.”

  との規定を入れます。
  または、CISG全体の適用を排除するのではなく、検品期間自体を
 短縮したいということであれば、具体的に2年よりも短期に規定する
 条項を入れるということが考えられます。」

>つくる氏
 「なるほど、わかりました!早速、ドラフティングしてみます。」

<この記事に関するお問い合わせ先>
 弁護士 西田 恵
  TEL: 06-6202-3402
  m-nishida@yglpc.com

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