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2009年07月10日

弁護士上甲悌二及び弁護士清水良寛が、2009年7月9日、最高裁第一小法廷にて、企業の「リスク管理体制」構築義務が問題となった事案について、逆転の「勝訴判決」を獲得しました。

【事件の表示】
事件番号 平成20年(受)第1602号
事件名  損害賠償請求事件
上告人  日本システム技術株式会社
【事案の概要】
本件は、会社(上場会社)の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ、その後、同事実が公表されて会社の株価が下落したことについて、公表前に同社の株式を取得した株主が、会社の代表取締役に従業員らの不正行為を防止するための「リスク管理体制」を構築すべき義務に違反した過失があり、その結果、損害を被ったなどと主張して、会社に対し、会社法350条に基づき損害賠償を請求した事案です。
【最高裁の逆転判決】
本件については、一審の東京地裁が、平成19年11月26日、原告の請求を一部認容し(判例時報1998号141頁)、控訴審の東京高裁も当方の控訴を棄却していましたが、今回、最高裁は、当方の主張を認めて、「会社は、通常想定される架空売上げの計上等の不正行為を防止し得る程度の管理体制は整えていたものということができる。」と判示して、リスク管理体制構築義務違反の過失がないと判断し、株主の請求を棄却しました。
なお、最高裁の判決全文については、最高裁のホームページをご覧下さい。
(判決全文)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090709152854.pdf
【コメント】
本判決は、企業の代表者が負う「リスク管理体制」構築義務に関する重要な最高裁判決であり、内部統制システムの構築やコンプライアンス態勢の観点から、留意しておくことが必要な判決であると解されます。なお、本判決に関する記事が、平成21年7月10日付け日本経済新聞の朝刊にて、「最高裁、株主の請求棄却」という見出しの下、掲載されました。
 また、本件と同種事案について、別の株主から大阪地裁に提起された事件については、一審及び控訴審とも、当方が勝訴し、相手方の上告受理申立てに対して、平成21年4月20日、上告審として受理しない旨の決定がなされ、当方の勝訴判決が確定しています。
当法人は、内部統制システムやリスク管理体制等に関する紛争や株主代表訴訟について、一定の経験を有していますので、訴訟等を始め、予防法務としてのアドバイス・セミナー等につきましても、ご遠慮なく、ご相談頂ければ幸いです。

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