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YGLPCメールマガジン第5号(2011年12月28日発行)

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★ YGLPCメールマガジン第5号(2011年12月28日発行)
 〜民事再生手続開始後に、取立て委任手形の商事留置権を有する銀行
  が手形の取立金を債務の弁済に充当できるという最高裁判例等
                         その他2記事〜
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                      発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同

            今号の目次
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1.最近の裁判例のご紹介
    (1) 民事再生手続開始後に、取立て委任手形の商事留置権を有する
           銀行が手形の取立金を債務の弁済に充当できるという最高裁判
           例(最高裁判所第一小法廷平成23年12月15日判決、平成22年
       (受)第16号)
  (2) システムエンジニアに裁量労働制(労基法38条の3)の適用
     が否定された裁判例(京都地方裁判所平成23年10月31日判決、
     平成21(ワ)第2300号)  

2.労働法最前線
  解雇手続きの正当性、公平性、透明性をどう保つか

3.書籍のご案内
    (1) 事業再編のための企業価値評価の実務
  (2) 私的整理の実務Q&A100問

 過去のバックナンバー
 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

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【最近の裁判例のご紹介(1)】

 民事再生手続開始後に、取立て委任手形の商事留置権を有する銀行が手形の
 取立金を債務の弁済に充当できるという最高裁判例が出されました(最高裁
 判所第一小法廷平成23年12月15日判決、平成22年(受)第16号)。
 
 この判決は、当事務所の主張が最高裁で認められた破産手続における手形
 の商事留置権(最高裁判所第三小法廷平成10年7月14日、平成9年(オ)
 第1213号)の民事再生版です。

  A社の再生手続開始申立てに伴い、B銀行が取り立て委任手形の商事留置
 権を取得し、A社が再生手続開始決定を受けた後に、B銀行が手形を取り立
 て、その取立金を銀行取引約定に基づき債務の弁済に充てたという事案で、
 A社は、B銀行に対し、不当利得返還請求を求めました。

  破産手続の場合は、破産宣告後も商事留置権が存続し、銀行取引約定に基
 づき債務の弁済に充てることが許されることが最高裁判例で認められました。

  ところが、破産手続においては、商事留置権を特別の先取特権とみなす規
 定(破産法66条1項)を設けることにより、優先弁済権能が認められてい
 ますが、民事再生法には同様の規定はありません。

  そして、手形の商事留置権を取立金に及ぼす実体法上の規定もありません
 ので、民事再生の場合は、取立金には商事留置権が及ばず、債務の弁済に充
 当できないとする説が有力でした。

  原審(東京高判平21年9月9日)でも、このような考え方から、B銀行の
 債務の弁済を認めず、A社の不当利得返還請求を認めました。

  通常、銀行取引約定書には、法定手続によらずに債務の弁済を可能とする
 文言がありますが、かかる銀行取引約定も、強行規定である民事再生法85条
 1項(弁済禁止)の適用を排するものではないとしたのです。

  しかし、最高裁は、留置権者は、留置権による競売が行われた場合には、
 その換価金を留置することができ、この理は、手形が取立てにより取立金に
 変じても、異なるところはないとして、取立金にも商事留置権が及ぶことを
 認めました。

 そして、取立金を法定手続によらず債務の弁済に充当し得る旨を定める銀
 行取引約定に基づき、債務の弁済に充当できるとしたのです。

  原審の判決は、破産と民事再生で商事留置権者の地位が大きく異なること
 や、銀行は手形を取立てると不利になるため手形自体を留置することになり
 再生債務者の利益ともならないとして、批判の多いところでしたので、最高
 裁の判断は妥当といえるでしょう。

 <この記事に関するお問い合わせ先>
 弁護士 雨宮 沙耶花
 TEL: 06-6202-0652
 E-mail: s-amemiya@yglpc.com

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【最近の裁判例のご紹介(2)】

 システムエンジニアに裁量労働制(労基法38条の3)の適用が否定された
 裁判例(京都地方裁判所平成23年10月31日判決、平成21(ワ)第2300号)

  労働基準法38条の3は、一定の専門的・裁量的業務に従事する労働者に
 ついて、過半数代表者との労使協定を締結すれば、実際の労働時間数にかか
 わらず一定の労働時間数だけ労働したものとみなすとしています。

  この専門的・裁量的業務については、同法施行規則24条の2の2が「情
 報処理システムの分析又は設計の業務」を挙げているところ、平成23年10
 月31日、京都地裁は、システムエンジニアについて、客先からシステム設
 計の一部しか受注していないことや、通達上「情報処理システムの分析又は
 設計の業務」に含まれないとされるプログラミング業務や営業活動にも従事
 しつつ相当程度のノルマを課されていたこと等から、裁量労働制が適用され
 るべき業務遂行の裁量性がなくなっていたと指摘して、裁量労働制の適用を
 否定し、元勤務先に未払賃金約570万円と同額の付加金の支払いを命じまし
 た。

  この判決も指摘するとおり、「情報処理システムの分析又は設計の業務」
 について裁量労働制の適用が認められているのは、システム全体を設計する
 技術者にとって、どこから手をつけ、どのように進行させるのかについて裁
 量性が認められるからです。単に「情報処理システムの分析又は設計の業務」
 に従事しているだけで、業務の実態に裁量制が認められない場合には裁量労
 働制の適用は認められません。

  このことは、労働基準法38条の3及び同法施行規則24条の2の2が定め
 る他の専門的・裁量的業務(研究開発技術者、編集者、プロデューサー・デ
 ィレクター、デザイナーなど)にも基本的に当てはまると思われますので、
 注意が必要です。

 <この記事に関するお問い合わせ先>
 弁護士 木村一成
 TEL: 06-6202-3393
 E-mail: k-kimura@yglpc.com

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【労働法最前線】

  解雇手続きの正当性、公平性、透明性をどう保つか

 (1) 解雇は、労働者にとって死活問題であるとともに、企業にとっても、
  一旦行った解雇が後で無効と判断されると経済的な損失だけでなく、企業
  秩序維持の観点から大きな障害となります。
 
 (2) さらに企業にとっては、解雇無効を主張されて紛争が発生すること自
  体によって、多大なリスクを負うことになるため、このような事態を可能
  な限り回避するため、解雇にあたっては、その正当性、公平性及び透明性
  を確保し、当該労働者及びその関係者を納得させて紛争を未然に防止する
  ことが望ましいといえます。

 (3) こうした解雇手続きの正当性、公平性及び透明性を確保するための具
  体的方策について吉田豪弁護士が解説した「解雇手続きの正当性、公平性、
  透明性をどう保つか」が「月刊ザ・ローヤーズ12月号」に掲載されまし
  たので、ご案内申し上げます。
    http://www.ilslaw.co.jp/M.Lawyers/M.Lawyers1112.html

 <この記事に関するお問い合わせ先>
 弁護士 吉田 豪
 TEL: 06-6202-3389
 E-mail: t-yoshida@yglpc.com

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【書籍のご案内】

(1) 事業再編のための企業価値評価の実務
   当法人の弁護士四宮章夫が監修し、当法人の弁護士(阪口彰洋上甲悌二
   大沢拓・軸丸欣哉名倉啓太渡邊徹藤田清文柴田昭久清水良寛吉田豪
   白石浩亮)が編集・執筆に参加した「事業再編のための企業価値評価の実務」
   が民事法研究会より出版されましたので、ご案内申し上げます。
  http://www.minjiho.com/wp/wp-content/themes/custom/euc/new_detail.php?isbn=9784896287417

(2)   私的整理の実務Q&A100問
   当法人の弁護士上甲悌二、弁護士軸丸欣哉、弁護士清水良寛、弁護士森本英伸
   執筆に参加した「私的整理の実務Q&A100問」が金融財政事情研究会より出版され
   ましたので、ご案内申し上げます。
  http://store.kinzai.jp/book/11963.html

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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同
・発行日:2011年12月28日発行

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