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YGLPCメールマガジン第50号(2017年6月30日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

        ★ YGLPCメールマガジン第50号 ★

 〜 民法(債権法)改正 施行時期と経過規定
                          その他2記事〜
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            今号の目次

1.民法(債権法)改正 施行時期と経過規定

2.非公開会社における新株発行無効の訴えの提訴期間

3.国際税務セミナーのご案内
 『企業価値向上のための国際税務戦略』

 過去のバックナンバー
 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

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【民法(債権法)改正 施行時期と経過規定】
1 民法改正法案は,平成29年4月14日に衆議院本会議を通過し,5月26日に参議院本会議でも可決され,6月2日に公布されました(平成29年法律第44号,以下「新法」といいます。)。また,民法を改正することに伴って必要となる諸法令の改正についてまとめた,「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律第45号,以下「整備法」といいます)も同日公布されています。これにより,民法の債権法部分が大きく改正されることになります。
2 一般に新たな法律が施行されるときには,従来の法律と新法の適用関係を定める附則が定められますが,今回の民法改正法案においても,法案と同時に,施行期日や経過措置等について定めた附則(以下「制定附則」といいます。)が定められています。
  施行時期や経過措置がどうなっているかは,実務的に関心が高いところです。
3 施行時期について
(1)原則
 民法は,私法の根幹にある法律ですので,その改正の影響は広範囲に及びます。それは,整備法で一部改正や経過措置を定める法律が300本以上になることからも窺えます。そこで,通常の法律よりも長い周知期間が取られる必要があることから,新法の施行は,公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日(以下「施行日」といいます。)とされています(制定附則1条本文)。
 公布日は,上記のとおり,平成29年6月2日ですので(官報号外第116号),新法は,平成32年6月2日までに施行されることになります。具体的には,平成32年1月1日か,同年4月1日が有力視されています。
(2)例外
 新法の施行時期については,2つの例外があります。
 1つは,施行日前の定型約款が施行日後に適用されることに反対する意思表示に関する制定附則33条3項で,この条文は「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」に施行されます(制定附則1条2号)。
 もう1つの例外は,保証に関して,施行日前に保証意思宣明公正証書を作成できることに関する制定附則21条2項,3項で,これらの条文は「公布の日から起算して2年9月を超えない範囲内において政令で定める日」に施行されます(制定附則1条3号)。
4 経過規定
(1)原則
 施行日前後の行為につき,新法と現行法のいずれが適用されるのかが不明確では,法律関係が不安定になります。そこで,制定附則2条〜36条は,新法と現行法のいずれが適用されるのかを決める基準が何か,具体的に列挙していますが,原則として,予測可能性という点から,法律が適用される対象行為(意思表示,法律行為,契約等)が法の適用を定める基準とされています(部会資料85)。
(2)例外
 例外といえるかどうかは別にして,何を基準とするのか,紛らわしい法律関係があり,特に,時効,法定利率・中間利息控除,債権者代位,債権譲渡,相殺,定型約款などは,実務的に注意が必要です。また,契約の更新に関しても,難しい問題があります。
 詳しくは,当弁護士法人のホームページに掲載した下記コラムをご覧ください。
 http://i.r.cbz.jp/cc/pl/dpvq8576/a5q4/wl5hgf49/

<この記事に関するお問い合わせ先>
 弁護士 阪口 彰洋 
 TEL:  06-6202-3320
 E-mail: a-sakaguchi@yglpc.com

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【非公開会社における新株発行無効の訴えの提訴期間】
1 株式会社がした新株発行の手続に一定の重大な法令違反がある場合,株主等は,新株発行無効の訴えを提起することができます(会社法828条1項2号)。
この点,新株発行無効の訴えは,いつでも可能であるわけではなく,法律上の提訴期間が制限されています。すなわち,公開会社においては,株式の発行の効力が生じた日から6箇月間以内,非公開会社においては,株式の発行の効力が生じた日から1年以内に提起しなければなりません(提訴期間の制限,会社法828条1項2号)。
2 今回ご紹介する裁判例(名古屋地裁平成28年9月30日判決・判時2329号77頁。以下,「本判例」といいます。)は,非公開会社でなされた新株発行無効の訴えに際し,一見,客観的な基準であり変更が予定されていないように見える提訴期間について,事案の妥当な解決を図る為に,柔軟に判断した裁判例です。
  本判例は,新株発行の効力が生じた日(払込期日)から,約2年が経過した後に同社の株主Xが提起した新株発行無効の訴えについて,(1)会社の代表取締役Yは,Xが株式を保有することを知りながら,Xに対して本件新株発行総会決議の招集通知を行わない等,Xが本件新株発行について察知する機会を失わせる隠ぺい工作を行ったこと,(2)Xが本件新株発行の事実を予想し,又は想定することは容易でなかったこと,(3)本件新株発行により株式の発行を受けたのはYのみであるから,取引の安全を考慮する必要性がさほど高いとはいえないこと,(4)Xが本件新株発行の存在を知ってから1年以内に訴えを提起しており,訴訟提起が不当に遅延したとはいえないこと等の事実から,信義則上,提訴期間を徒過し
て,訴えを提起したとはいえないと判断しました。すなわち,本判例は,株主Xが被る不利益の大きさやYの行為の悪質性((1),(2))に鑑み,本件株式発行は無効とすべきであるとの価値判断の下,取引の安全の観点からも問題がないこと((3),(4))から,本件株式発行の提訴期間を柔軟に解釈した裁判例であるといえます。
なお,本判例は,本件新株発行が商業登記に登記済みであること,会社のホームページの資本金の額が変更された旨表示されていたこと等の事情があっても結論は変わらない,と判断しています。
3 本判例は事例判断でありますし,新株発行の提訴期間については,原告が新株発行の事実を知り得なかった事情があっても,提訴期間を延長するような解釈をすることはできないとする見解もありますので(東京高裁昭和61年8月21日判決・判タ627号204頁),かかる論点は,今後の裁判例の集積を待つところではありますが,事案の妥当な解決を図る為に,法律の明示的な文言に解釈を加えた例として,ご紹介させて頂きました。

<この記事に関するお問い合わせ先>
 弁護士 川井田 渚
 TEL:  03-6267-1205
 E-mail:nagisa-kawaida@yglpc.com

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【国際税務セミナーのご案内】『企業価値向上のための国際税務戦略』
当法人は、『企業価値向上のための国際税務戦略』と題する国際税務セミナーを東京(7月12日)と大阪(7月13日)で開催いたします。

当法人に所属する弁護士木村浩之が、海外の事務所での実務経験に基づいて、国際税務戦略の意義から、各国の税制や租税条約を活用した国際税務戦略の具体例、OECD/G20のBEPSプロジェクトの動向を踏まえた今後の国際税務戦略まで、わかりやすく解説いたします。

参加費は無料(ただし、1,000円のテキスト代は別途)とさせていただいておりますので、海外でのビジネスに携わる多くの方ご参加をお待ちしてります。

セミナーの詳細及びお申込みにつきましては、次のURLをご覧ください。
http://i.r.cbz.jp/cc/pl/dpvq8576/cun9/wl5hgf49/

<この記事に関するお問い合わせ先>
 弁護士法人 淀屋橋・山上合同 (担当 松田・西川)
 TEL 06-6202-3448
 Email: seminar@yglpc.com

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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同
・発行日:2017年6月30日発行

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