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YGLPCメールマガジン第44号(2016年8月31日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

 

        ★ YGLPCメールマガジン第44号 ★

 

 〜 特約があっても三者間相殺が民事再生法上許容されないとした新判例

                                                その他2記事〜

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            今号の目次     

           

 1.特約があっても三者間相殺が民事再生法上許容されないとした新判例

 

 2.刑法改正〜刑の一部執行猶予について〜

 

 3.改正個人情報保護法の政令案と規則案が公表されています

 

 過去のバックナンバー

 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

 

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【特約があっても三者間相殺が民事再生法上許容されないとした新判例】

 

1 三者間相殺は、商社取引などの局面で実務的なニーズがあります。

 

  他方、裁判例が乏しく、三者間相殺の法律構成、対外的効力が認められるための要件、

 倒産法上の相殺制限との関係等について解釈が定まっていませんでした。

 

  そのような中で、最高裁は、特約に基づく三者間相殺について、民事再生法92条に

 より許される相殺に当たらない旨判示しました(最高裁第二小法廷平成28年7月8日

 判決・平26(受)865号)。

 

2 事案は、A証券会社とB信託銀行がデリバティブ取引を行うに際して、一方当事者に

 期限の利益喪失事由が生じ、契約を期限前に終了させるときには、「Aとその関係会社」

 がBに対して有する債権債務と「Bとその関係会社」がAに対して有する債権債務とを

 相殺できるという特約を締結していたところ(なお、「関係会社」については子会社、

 親会社、親会社を同じくする会社という定義がされていました)、Aに民事再生手続が

 開始されたため、Bは、上記特約に基づき、Aに対して負う約4億円の清算金債務と、

 Bの関係会社であるCがAに対して有する債権を、Cの同意を得て相殺したというもの

 です。

 

  一審(東京地判平25・5・30判時2198号96頁)、控訴審(東京高判平26・1・29金判

 1437号42頁)はいずれも上記特約に基づくBの相殺を有効と認めたのですが、最高裁は、

 民事再生法92条の趣旨、文言等からすると、「再生債務者に対して債務を負担する者が

 他人の有する再生債権をもって相殺することができるものとすることは,互いに債務を

 負担する関係にない者の間における相殺を許すものにほかならず,・・・相当ではない。

 このことは,完全親会社を同じくする複数の株式会社がそれぞれ再生債務者に対して

 債権を有し,又は債務を負担するときには,これらの当事者間において当該債権及び

 債務をもって相殺することができる旨の合意があらかじめされていた場合であっても,

 異なるものではない。」と判示し、Aを勝訴させました。

 

3 この最高裁判決は、ISDAマスター契約によるデリバティプ取引終了に伴う一括清算

 のためになされたグループ関係会社間の相殺という、やや特殊な事案に関するもので、

 また、民事再生手続との関係が問題となったものです。

 

  ただ、民事再生法92条と同様の定めは破産法67条以下にもありますし、最高裁の法廷

 意見の判示からすると、その射程距離は三者間相殺一般に及ぶのではないかと思われます

 ので、注意が必要です。

 

4 三者間相殺に関する従前の議論では、AB間の取引とAC間の取引に牽連性があり、

 相殺の合理的期待を有している場合には許容されるべきであるとの有力な見解があり、

 また、この最高裁判決の千葉勝美裁判官の補足意見は、上記特約において具体的にCを

 「関係会社」として指定していたならば相殺が許される可能性があることを示唆してい

 ます。

 

  さらに、現在、審議中の改正民法案469条2項や511条2項では、相殺の範囲を拡大

 することが予定されており、三者間相殺が現行民法よりも認められやすくなる可能性も

 あると言えます。

 

  裁判例の動向や民法改正なども注視しつつ、どのような場合に三者間相殺が可能なのか、

 今後も慎重に検討する必要があります。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

  弁護士 阪口 彰洋

  e-mail: a-sakaguchi@yglpc.com

  TEL: 06-6202-3320

 

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【刑法改正〜刑の一部執行猶予について〜】

 

1 平成28年6月1日から,「刑法等の一部を改正する法律」及び「薬物使用等の罪を犯した

 者に対する刑の一部執行猶予に関する法律」が施行され、刑の一部執行猶予制度が始まり

 ました。

 

2 この制度は、比較的軽い罪を犯した初犯者(禁固以上の刑に処せられたことがない者)や、

 薬物使用等の罪を犯した者が対象となっており、3年以下の懲役または禁錮の言い渡しを

 受ける際に、その刑の一部の執行が猶予されるというものです。

 

3 刑の一部執行猶予判決の場合、たとえば、「懲役3年、そのうち1年の執行を5年間猶予する」

 といった刑が言い渡されることになります。

 

  この場合,懲役3年間のうち、最初の2年間は刑事施設において刑の執行を受け、最後の

 1年間について刑の執行を5年間猶予されるということになります。

 

4 そして、一部執行猶予の期間中は、保護観察を付することができるとされています。

  また、薬物使用等の罪の場合には、必ず保護観察を付するとされています。

 

5 このように、刑事施設における処遇に引き続き保護観察処遇を実施することにより、再犯防止

 及び社会復帰の促進を図ろうとするのが、刑の一部執行猶予の狙いといわれています。

 

6 報道によれば、本制度が始まった平成28年6月1日からの1か月間で、134人に対して刑の

 一部執行猶予判決が言い渡されており、そのうち95%超が薬物事案に関するものであるとのこと

 です。

 

  筆者が入手したものでは、「施設内処遇に引き続き社会内でも専門的指導を受けながら更生を

 図らせることが再犯防止の観点から必要かつ相当」や、「仮釈放ではできないような比較的長期に

 わたる社会内処遇を行い、覚せい剤からの離脱を図るのが必要かつ相当」といった理由で刑の

 一部執行猶予を言い渡した判決があります。

 

 このように、薬物事案に関して、再犯防止のために有用であるとして刑の一部執行猶予判決を

言い渡したものが多いようですが、今後、どのような事案において一部執行猶予判決が言い渡

されるのか、注目されます。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

  弁護士 堀内 聡

  TEL:  06-6202-8535

  E-mail: satoshi-horiuchi@yglpc.com

 

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【改正個人情報保護法の政令案と規則案が公表されています】

 

 平成27年の個人情報保護法の改正に伴う政令案と規則案が公表されています。

 

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=240000022

(パブリックコメントは8月31日締切)

 

 政令案及び規則案では、次の内容が定められており、改正案の施行に向けて、個人情報を取り

扱っておられる事業者様においては、今後、どのような準備が必要か検討が必要となります。

 

 ・個人識別符号の内容

 ・要配慮個人情報の内容

 ・第三者提供の際の記録の作成の方法・記録事項・保存期間

 ・匿名加工情報の作成方法に関する基準

 ・加工方法等情報に係る安全管理措置の基準

 ・匿名加工情報の作成・第三者提供時における公表の方法

 

 なお、改正案についての記事は、次のURLをご参照ください。

 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/201510_1161.html

 

 ご不明な点などございましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 森田 博

 e-mail: h-morita@yglpc.com

  TEL: 06-6202-3542

 

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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同

・発行日:2016年8月31日発行

 

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