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YGLPCメールマガジン第33号(2015年2月27日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

 

        ★ YGLPCメールマガジン第33号 ★

 

      〜 法人税はどのように変わるのか?

       平成27年度税制改正大綱のポイント その他2記事〜

 

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            今号の目次

           

 1.法人税はどのように変わるのか?

   平成27年度税制改正大綱のポイントを解説します。

 

 2.労働法最前線

   「残業代ゼロ」法案提出へ 厚労省、来春の施行をめざす!?

 

 3.ここが変わる!民法改正(第1回)

   売買の瑕疵担保責任の条文が変わります。

 

 過去のバックナンバー

 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

 

 

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【法人税はどのように変わるのか?】

 〜平成27年度税制改正大綱のポイント〜

 

1 はじめに

 

  今年1月14日に、例年よりも遅いタイミングで平成27年度税制改正

 大綱が閣議決定されました。

 

  (参照)財務省ホームページ

  http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline

 

  税は国の財政の基盤といえますが、今回の税制改正の中で目玉ともいう

 べきが「法人税改革」であります。これは、法人税における「税率の引下

 げ」と「課税ベースの拡大」という方向性を明らかに打ち出したものとな

 ります。また、法人税改革以外にも、いくつか興味深い改正内容が盛り込

 まれています。

  そこで、今回は、法人税はどのように変わるのかという点を中心に、平

 成27年度税制改正大綱のポイントについて取り上げてみたいと思います。

 

2 法人税改革について

 

  報道等で取り上げられることも多いですが、企業誘致のために法人税の税

 率を引き下げるというのが国際的な潮流になっています。税率を引き下げる

 ことによって企業活動のインセンティブを高め、企業を誘致することで経済

 力を強化するという考え方です。

  このような政策は安倍内閣の推進する「アベノミクス」に合致するもので

 あり、今回の税制改正大綱では、法人税の税率を段階的に引下げることが明

 らかにされています。

  ただ、社会保障費の増大等によって国家財政は逼迫しており、税率の引下

 げに見合うだけの財源が必要ですが、肝心の消費税については、足元の景気

 に配慮して10%への引上げの延期が決定されています。

  そこで、法人税改革の両輪として、税率の引下げにあわせて財源の確保、

 すなわち課税ベースの拡大が図られることになります。課税ベースと一口に

 いっても様々ありますが、今回の改正では、欠損金繰越控除の縮小、受取配

 当益金不算入の縮小、法人事業 税の外形標準課税の拡大、租税特別措置の

 見直しなどが予定されています。

 

  なお、平成27年度税制改正は法人税改革の「第一段階」であり、基本的

 には大法人が対象であり、中小法人が対象となっていません。今後の注目す

 べきポイントとして、我が国の企業数にして99%を占る中小法人をどうす

 るのかということが挙げられます。

  また、租税特別措置については、民主党政権時代から見直しが叫ばれてい

 ますが、「既得権益」と化したものも多く、改革道半ばの状態です。

  そこで、今後、租税特別措置の見直しがどの程度進むのかということにも

 注目していきたいと思います。

 

3 その他の注目点

 

  税制改正大綱には、法人税改革以外にも様々な改正内容が盛り込まれてい

 ます。その中でも、特に注目したい点をいくつか挙げておきたいと思います。

 

(1)地方拠点強化税制

 

  東京圏以外の地方に事業拠点となる建物等を取得した場合に、税制上の優

 遇措置が受けられるというものです。これにより、東京圏に事業拠点が集中

 するという現状の是正を図ろうとするものです。

  このような目的自体は正当なものと思われますが、その適用要件が煩雑で

 あることや税制上のメリットが十分とはいえないことから、今後、より大胆

 な制度改革が望まれるところです。

 

(2)世代間移転促進税制

 

  平成25年度税制改正において「直系尊属から教育資金の一括贈与を受け

 た場合の贈与税の非課税措置」が創設されましたが、今回は「結婚・子育て

 資金の 一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が創設されることになりまし

 た。少子化による人口減少を緩和するため、若い世代の結婚・子育てを促進

 しようとするものです。

  適用要件としては、教育資金の一括贈与と同様、金融機関に信託をするな

 どの手続が必要ですが、1000万円を限度として贈与税が非課税となりま

 すので、世代間の財産移転が促進されることになります。

 

(3)消費税の軽減税率

 

  消費税の軽減税率については、その煩雑さに比して効果が乏しいことから

 特に有識者の間で批判が強い制度です。ところが、今回の税制改正大綱では

 「平成29年度からの導入を目指す」ことが明らかとされています。

  軽減税率は一見聞こえのよい制度ですが、上記のとおり欠陥が多く、批判

 が強い制度でもあります。今後、さらなる議論がなされることになりますが

 その動向には注目したいと思います。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 木村 浩之   

    TEL:06-6202-4162     

    E-mail:h-kimura@yglpc.com

 

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【労働法最前線】

「残業代ゼロ」法案提出へ 厚労省、来春の施行をめざす!?

 

1 厚生労働省の労働政策審議会は、平成27年2月13日、長時間働いて

 も残業代などが払われない新しい働き方を創設する報告書をまとめ、これ

 を踏まえて厚労省は、「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」を策

 定し、同月17日、労働政策審議会に対して諮問しました。労働組合など

 から「『残業代ゼロ』になり、働き過ぎの歯止めがなくなる」と批判の声が

 ありますが、厚労省は今通常国会に同法律案を提出し、平成28年4月の

 施行を目指しているようです。

 

2 この新しい働き方は「高度プロフェッショナル制度」(以下「本制度」と

 いいます。)と呼ばれ、高度な専門知識や技術、経験を持つ労働者(年収条

 件として1075万円を参考に厚生労働省令で定められる予定。為替ディー

 ラーやアナリスト、コンサルタントなどを想定。)を対象として、年間104日

 の休日を取得させることなどを条件に、何時間働いても残業代や深夜、休

 日手当が支払われなくなります。前記報告書によれば、「時間でなく、成果で

 評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分

 に発揮できるようにする」ことが本制度導入のねらいとされています。

 

3 しかしながら、本制度に対しては、労働者側から批判の声も相次いでいます。

 例えば、「使用者には、労働者の命と健康を守る安全配慮義務があるにもかかわ

 らず、本制度では労災の過労死認定基準である毎月80時間以上の時間外労働を

 命じても合法となる」、「本制度は、『成果に応じて賃金を増やす』ことを導入企

 業に約束させるわけではないため、成果をあげても賃金は増えないということも

 あり得る」、「本人の同意を必要とされているが、労働者側からすれば事実上拒否

 できない」等の問題点が指摘されています。

  他方で、使用者側からは、「日本の経済成長にとって必要な創造的な働き方は、

 時間に拘束されない自由な働き方から生まれてくる」とか、「知的な創造力を生

 かして企業に貢献する人 特に、よい成果を上げて基本給や賞与、さらには昇進

 という形の報酬が良いと考えている人にとっては、労働時間規制は不要である」

 との考え等から、さらなる対象拡大が求められています。

 

4 労働者側・使用者側双方の見解の溝が完全に埋まることはないと思われますが

 いかに実効性のある健康・福祉措置を講じることができるかが鍵となると思われ

 ます。

  今後の動向につき、有益な情報があり次第、適宜ご紹介させていただきます。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 佐藤 康行

    TEL:  06−6202−3460

    E-mail: y-sato@yglpc.com

 

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【ここが変わる!民法改正(第1回)】

 売買の瑕疵担保責任の条文が変わります。

 

1 現行民法では、売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、買主は、売主に対し

 て損害賠償請求ができ、瑕疵が存在するために契約の目的を達成することができな

 かったとき、売買契約を解除できると規定されています(現行民法570条、566条1

 項)。この規定の法的性質について、契約責任説と法定責任説という二つの考え方が

 あり、それにより効果が異なることから大きな争いとなっていました。

  今回の民法改正案によって、法定責任説を否定し、契約責任説を採用することが

 明らかとなりました。改正法では、要件面について、改正に伴って「隠れた」、「瑕

 疵」という文言がなくなり、代わりに「種類」、「品質」、「数量」に関して、「契約の

 内容に適合しない」ことが要件となりました。

 

2 次に、効果面では、追完請求権が明文で認められるようになりました。「目的物の

 修補」、「代替物の引渡し」、「不足分の引渡し」による履行の追完がその内容になり

 ます。その他、代金減額請求権も認められることになりました。さらに、損害賠償

 請求や解除についても、債務不履行の一般原則に従って行使できます。

  実務への影響は、今回の改正内容全体から見れば比較的少ないと言えます。但し

 留意すべき点はいくつかあります。要件面では、契約適合性が争いになるので、そ

 の内容を明確に売買契約書に盛り込んでおく必要があると思われます。

  効果面でも、基本的に法定責任説に立って信頼利益しか認めないことが多かった

 裁判所が、今後は契約責任説の採用に伴い、履行利益という理解に基づいてより高

 額の損害賠償責任を認める可能性があることに注意すべきです。

 

3 また、追完請求権が認められることになった結果、追完の方法をめぐって買主と

 売主の間で争いが生じる可能性があることにも注意が必要です。

 

※改正条文案(条数は、法務省の部会資料84-2に基づく暫定的なもので、実際の条数

 とは異なります)。

 

■改正後民法5562条(買主の追完義務)

「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであ

るときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しに

よる履行の追完を請求することができる。(1項一部抜粋)」

 

■改正後民法563条(買主の代金減額請求)

「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであ

る場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行

の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することが

ができる。(1項)」

 

■改正後民法564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)

「前二条の規定は、第415条の規定による損害賠償請求並びに第541条及び第542条の

規定による解除権の行使を妨げない。」

 

 <この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 野中 啓孝

    TEL: 06-6202-4164

    E-mail:h-nonaka@yglpc.com

 

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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同

・発行日:2015年2月27日発行

 

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