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YGLPCメールマガジン第32号(2015年1月30日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

 

        ★ YGLPCメールマガジン第32号 ★

 

      〜 シンガポール会社法改正がM&Aに与える影響

                                           その他3記事〜

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            今号の目次

           

 1.シンガポールにおけるLBO

   シンガポール会社法改正がM&Aに与える影響

 

 2.労働法最前線

   使用者はどこまで従業員に対する調査を実施することができるか!?

 

 3.YGLPC連続セミナー開催のお知らせ

   〜『アジア法〜シンガポール法の概要と近時のトピック』〜

 

 4.新人弁護士のご紹介

 

 過去のバックナンバー

 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

 

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【シンガポールにおけるLBO】

シンガポール会社法改正がM&Aに与える影響

 

(1) シンガポール会社法76条は、”whitewash”と呼ばれる手続きを経ない  

 限り(例えば、取締役会決議、株主総会の特別決議、裁判所による許可(同

 法76条10項))、自社又は持株会社の株式の取得のために「経済的援助」

 (financial assistance)をすることを禁止しています。

 

(2) このfinancial assistanceの禁止は、M&Aとの関係では、LBO(レバ

 レッジバイアウト:買収する相手の資産や収益を担保に、買収する資金を 

 調達して買収する手法)の障害になります。

  つまり、対象会社の株式を担保に、買収資金を調達するためには、” 

 whitewash”しなければならないということになります。

 

(3) financial assistanceの禁止は、会社資産の維持、債権者の保護を主

 な理由としているとされていますが、その理由自体に異論があり、実務に

 おける取引を阻害しているとの強い批判も根強くありました。

  そこで、今般、シンガポール会社法が改正され、(a)financial

 assistanceの禁止は公開会社(public company)のみに適用され、(b)会

 社又は株主の利益、又は、債権者への弁済能力に対する重大な侵害がない

 場合には取締役会決議のみでfinancial assistanceが許されるという例

 外(”no material prejudice rule”)

  が新たに追加されました。

    この改正により、少なくとも、非公開会社(private company)のLBO

 は、financial assistanceの規制の対象外となりました。

    なお、同改正は、2014年10月8日に国会で可決されていますが、施行

 日は未定です。

 

(4)  financial assistanceの禁止は、英国会社法に流れを汲むもので、同

 法を基礎としている国(例えばアジア内では、シンガポールの他に、香港、

 マレーシア)では、同様の規定が見受けられます。

    当該規定は、上記のM&A以外にも影響を及ぼしますので、シンガポール

 に限らず、他の国における改正の動向に留意する必要があります。

 

(5) シンガポール会社法改正、その他シンガポール法に関連して何かご質問

 がありましたら、ご遠慮なくご相談下さい。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

  弁護士 大林 良寛

 E-mail: y-obayashi@yglpc.com

 

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【労働法最前線】

使用者はどこまで従業員に対する調査を実施することができるか!?

 

 今回ご紹介するのは、大阪市による入れ墨調査の可否が争われた大阪地判平

成26年12月17日(以下「入れ墨調査事件」といいます。)と、アンケート

調査の可否が争われた大阪地判平成27年1月21日(以下「アンケート調査

事件」といいます。)です。

 

 両事件に関し、あたかも大阪市の調査の全てが違法であるかのような報道が

なされています。

 

 しかしながら、両事件は、業務上の必要性がある場合において、その調査の

目的に必要な限りで職員に対する調査が可能であり、プライバシー権(憲法1

3条。以下同じ。)を侵害しないと判断したことにこそ、その意義を見出すべき

でしょう。

 

 更に、アンケート調査事件において、裁判所が、職員に調査協力義務が無い

との原告らの主張を排斥除している点にも注目すべきでしょう。

 

 なお、入れ墨調査事件については、既に大阪市が控訴しており、アンケート

調査事件についても、大阪市は控訴する方針を示しています。

 

 先ず、入れ墨調査事件において、裁判所は、当時の大阪市の状況からすれば、

入れ墨調査の必要性が認められ、その調査手法からして、職員のプライバシー

権を侵害しないと判断しました。

 

 ただ、大阪市が制定した個人情報保護条例において「社会的差別の原因とな

るおそれがあると認められる事項に関する個人情報」の収集が原則禁止されて

いるところ、入れ墨調査はこの条例に違反するために違法であるとして、調査

票の未提出を理由とする戒告処分を取り消したのです。

 

 なお、裁判所は、調査への回答を命じられたことにより生ずる不快の念は「損

害」に当たらないとして、調査自体による損害賠償請求を否定しています。

 

 他方で、訴訟提起に対する報復人事について、損害賠償を認めました。

 

 次に、アンケート調査事件において、裁判所は、アンケート調査の目的の正

当性、調査の必要性及び手法の相当性等を総合的に判断して、22項目の質問

のうち、2項目についてプライバシー権侵害として、また、別の3項目につい

て団結権(憲法28条)を侵害して、それぞれ違法と判断しましたが、残る1

7項目についてはプライバシー権を侵害しないと判断したのです。

 

 なお、プライバシー権侵害が認められた2項目は、特定の政治家を応援する

活動への参加の有無等についての調査であり、職務に関係が無い上に、調査の

具体的な必要性が認められる部分に限定せずに過度に広範に回答を義務付ける

点において、プライバシー権を侵害するものと判断されました。

 

 両事件からすれば、民間企業においても、調査の目的、必要性について慎重

に検討し、かつその手法も吟味する必要があるものの、従業員に対し一定の範

囲内において、調査に対する回答を求めうるものと思われます。

 

 ただ、両事件でも一部違法と評価されているように、微妙な判断が求められ

ますので、詳細は専門家にご相談ください。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

弁護士 白 石 浩 亮

TEL:  06−6202−3324

E-mail: k-shiraishi@yglpc.com

 

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【YGLPC連続セミナー開催のお知らせ】

 『アジア法〜シンガポール法の概要と近時のトピック』

 

 当法人において、「YGLPC連続セミナー」を定期的に開催させていただいており

ますが、 第6回として、平成27年2月19日に、「アジア法〜シンガポール法の

概要と近時のトピック」をテーマとして、シンガポールの現地法律事務所に勤務

中の当法人の大林良寛弁護士がセミナーを開催いたします。

 上記セミナーの詳細・お申込みついては、以下よりお願いいたします。

 https://www.yglpc.com/wp/news/20140114.html 

 お気軽にご参加ください。

 

<上記セミナーに関するお問い合わせ先>

 seminar@yglpc.com 宛に、メールでお問い合わせください。

 

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【新人弁護士のご紹介】

 

 当弁護士法人は、2015年1月から、新たに大川恒星弁護士、玉置菜々子

弁護士を迎えました。

 

 ともに新進気鋭の弁護士であり、必ず皆様のお役にたてるものと確信して

おります。

 

[大川恒星弁護士からのご挨拶]

 

皆様に初めてご挨拶させていただきます。弁護士の大川恒星と申します。

本年1月から当法人に入所し、弁護士としてのスタートラインに立ちました。

「やる気、元気、前向き」をモットーに、皆様のご期待に沿えるよう誠心誠

意研鑽に励む所存です。

 

私事で大変恐縮ですが、「恒星」という私の名前は「こうじ」と読みます。

これまで一人として読める方がいらっしゃらなかったことが、私の密かな自

慢です。

今後とも何卒よろしくお願いいたします。

 

[玉置菜々子からのご挨拶]

 

皆様に初めてご挨拶させていただきます。

本年1月に入所致しました、弁護士の玉置菜々子(たまおき ななこ)と申

します。

生まれは神戸、育ちは宝塚の生粋の関西人です。

「ちょっと聞きたいことがあるんやけど」と気軽に相談でき、「君に相談し

てよかったわ」と満足していただけるリーガルサービスを提供する弁護士を

目指して、日々研鑽に励む所存ですので、何卒よろしくお願いいたします。

 

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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同

・発行日:2015年1月30日発行

 

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