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YGLPCメールマガジン第23号(2014年4月28日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

 

        ★ YGLPCメールマガジン第23号 ★

 

  〜 労働法最前線 

新卒者による内定辞退が会社に対する損害賠償責任を形成するケース

                                                  その他5記事〜

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             今号の目次

           

1.労働法最前線

  新卒者による内定辞退が会社に対する損害賠償責任を形成するケース

 

2.暴力団関係者がゴルフするのは詐欺罪?

   暴力団排除に向けた効果的な取り組みは大丈夫ですか?!

 

3.シンガポール法:外国判決の承認と執行

   中国の判決はシンガポールで承認,執行されるのか?

 

  1. セミナーのご案内『企業コンプライアンス入門』

 

  1. YGLPC連続セミナー開催のお知らせ

 

  1. 交通事故に関する相談予約申請フォームの新設

 

過去のバックナンバー

 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

 

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【労働法最前線】

 

 新卒の一括採用制度を取っている我が国の多くの会社にとって、春は入社のシ

ーズンです。この頃になると、入社直前に内定を辞退された、あるいは、入社三

日で新入社員が来なくなった、等々の相談が時折見られます。

 

 本来、内定者にはこれを辞退する自由があり、新入社員にも退職の自由がある

以上、通常は内定辞退や退職(以下「内定辞退等」といいます。)は受け入れざ

るを得ないのですが、内定辞退等の態様が悪質であると、投下したコストの返還

を求めたくなる会社側の気持ちも理解できます。

 

 今回、ご紹介するのは、入社日前日に内定を辞退した内定者に対する損害賠償

責任の有無が争われた、東京地裁平成24年12月28日判決です。

 

 この裁判例は、おそらく刊行物に掲載されている裁判例において初めて、内定

を辞退した内定者に対する損害賠償責任の存否を正面から判断した裁判例ですが、

以下のように判断しました。

 

 ア 内定は、大学卒業を停止条件として成立している(停止条件付労働契約)。

 

 イ 内定者は、入社日までにアの条件成就を不可能ないしは困難にする事情が

   発生した場合、信義則上、会社に対しその旨を報告し、しかるべき措置を

   講ずべき義務を負う。

 

 ウ 但し、内定者は、いつでも内定辞退(停止条件労働契約の解約申入れ)で

   きる地位が保障されているのであるから、内定辞退の申入れが、著しく信

   義則上の義務に違反する態様で行われた場合に限り、内定者は不法行為又

   は債務不履行により損害賠償責任を負う。

 

 この裁判例では、内定辞退に至った原因の一端が会社側にもあったことから、

内定者の損害賠償責任は否定されましたが、一般論として、悪質な態様でされた

内定辞退により、内定者に損害賠償責任が認められうることが肯定されました。

 

 また、仮に損害賠償責任が認められるとしても、その範囲は、新たに採用活動

に要した費用程度に限られるでしょうから、内定辞退者のために投下した費用の

賠償まで求めることはできません。

 

 また、この裁判例が定立した要件も厳しく、適用できるのは限定的なため、現

実的には、このような裁判例があることを前提に、内定を辞退する場合には速や

かに報告するよう誓約させて、抑止効果を狙う程度の対応に留まるでしょうが、

興味深い一事例ですので、参考までにご紹介する次第です。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 白石 浩亮

  TEL:  06−6202−3324

  E-mail: k-shiraishi@yglpc.com

 

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【暴力団関係者がゴルフするのは詐欺罪?】

 平成26年3月28日、最高裁第2小法廷は、身分を隠した暴力団関係者が正規

の料金を支払ってゴルフをしたという2つの同様の事件について、有罪と無罪の

異なる判断を下しました。このように、一見すると矛盾する決定が下された理由

は、どこにあるのでしょうか。

 

(1)有罪の決定

 まず、有罪とされた事案では、暴力団関係者である被告人は、フロントに設置

されたご署名簿に自署することなく、当該ゴルフ施設を利用しました。すなわち、

当該ゴルフ倶楽部のゴルフ場利用約款において、利用客は、会員、ビジターを問

わず、フロントにおいて、ご署名簿に自署して施設利用を申し込むこととされて

いたにもかかわらず、当該ゴルフ倶楽部の会員であったAは、被告人が暴力団員

であることが発覚するのを恐れ、フロントにおいて、自分については「ご署名簿

(メンバー)」に自署しながら、被告人を含む同伴者については、当該ゴルフ倶

楽部が用意していた「予約承り書」の組み合わせ表欄に、氏名を交錯させるなど

して乱雑に書き込んだ上、これを当該倶楽部従業員に渡して、ご署名簿への代書

を依頼し、被告人がフロントに赴き、署名をしないで済むようにしました。

 

 その結果、被告人は、フロントに立ち寄ることなくプレーを行ったのです。

 

 このような事実を前提に、最高裁は、「入会の際に暴力団関係者の同伴,紹介

をしない旨誓約していた本件ゴルフ倶楽部の会員であるAが同伴者の施設利用を

申し込むこと自体,その同伴者が暴力団関係者でないことを保証する旨の意思を

表している」として、Aによる施設利用申込自体が詐欺罪の実行行為に該当する

と判断しました。

 

 もっとも、上記のとおり判断がされた背景には、以下のように、当該ゴルフ倶

楽部が暴力団排除活動を重点的に行っていたという事情があります。

 

 最高裁は、1.当該ゴルフ倶楽部において、ゴルフ場利用約款で暴力団員の入場

及び施設利用を禁止する旨規定し、2.入会審査に当たり暴力団関係者を同伴、紹

介しない旨誓約させるなどの方策を講じていたほか、3.長野県防犯協議会事務局

から提供される他の加盟ゴルフ場による暴力団排除情報をデータベース化した上、

予約時又は受付時に利用客の氏名がそのデータベースに登録されていないか確認

するなどして暴力団関係者の利用を未然に防いでいたという事実を認定し、この

ような事実関係を前提に、Aによる施設利用申込行為が、詐欺罪にいう「人を欺

く行為」にあたると判断したのです。

 

(2)無罪の決定

 これに対し、無罪とされた事案では、まず、被告人が、通常の利用客と同様に、

自らご署名簿に自署をして、施設利用を申し込んだという事情があります。

 

 特に、この件で問題となった2つのゴルフ場のうち1つは、会員の同伴がなく

てもゴルフ場を利用できる制度になっており、被告人も、会員の同伴なく当該施

設を利用していました。

 

 このような事案で、最高裁は、当該ゴルフ場が、1.ゴルフ場利用細則又は約款

で暴力団関係者の施設利用を拒絶する旨を規定しており、2.九州ゴルフ場連盟等

に加盟した上、3.クラブハウス出入口に「暴力団関係者の立入りプレーはお断り

します」などと記載された看板を設置するなどして、暴力団関係者による施設利

用を拒絶する意向を示していたことを認定しつつも、i本件ゴルフ場と同様に暴

力団関係者の施設利用を拒絶する旨の立看板等を設置している周辺のゴルフ場に

おいて、暴力団関係者の施設利用を許可、黙認する例が多数あり、被告人らも同

様の経験をしていた、ii事件当時、警察等の指導を受けて行われていた暴力団排

除活動が徹底されていたわけではなかった等と認定して、最終的に、暴力団関係

者であることを申告せずに施設利用を申し込む行為自体は、申込者が当然に暴力

団関係者でないことまで表しているとは認められないとして、「本件各ゴルフ場

の各施設利用申込み行為は、詐欺罪にいう人を欺く行為には当たらない」と判断

しました。

 

(3)2つの最高裁判例から学ぶこと

 上記のとおり最高裁の判断が分かれた理由としては、まず、被告人の施設利用

申込方法の違いが考えられます。無罪の事案では、被告人は、通常の利用客と同

様に施設利用の申込みを行っていたのに対し、有罪の事案では、会員である同伴

者が施設従業員に被告人の氏名を代書させるという特異な方法で施設利用の申込

みを行いました。このような申込方法の相違が、判断に影響を与えたものと思わ

れます。

 

 次に考えられるのが、ゴルフ場の暴力団排除に向けた取り組みの相違です。

 

 2つの決定を比べれば、有罪とされた事案では、無罪とされた事案に比べて、

ゴルフ場に暴力団関係者の利用を拒絶する強い意思があり、それに基づく取り組

みが行われていたと評価できます。

 

 本件は、ゴルフ場の施設利用に係る詐欺罪が問題となりましたが、当該施設が

暴力団排除に向けてどのような取り組みを行っているかが裁判所の判断に影響を

及ぼすということを示したという意味では、他の施設や企業にも参考になるもの

と思われます。本最高裁判例が出された結果、暴力団関係者としても、詐欺罪と

ならないよう、暴力団排除の取り組みが十分に行われている施設等の利用を回避

すると思われますので、今まで以上に、暴力団排除の取り組みの効果が顕著に表

れることになります。暴力団排除に向けた具体的な取り組み方法については、当

事務所までお気軽にご相談ください。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 田積  司

  TEL: 06-6202-4443

  E-mail: t-tatsumi@yglpc.com

 弁護士 高橋 理恵子

  TEL: 06-6202-3465

  E-mail: r-takahashi@yglpc.com

 

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【シンガポール法:外国判決の承認と執行】

中国の判決はシンガポールで承認,執行されるのか?

上記の詳しい内容については、次のコラム記事をご参照下さい。

 

■コラム

 https://www.yglpc.com/wp/column/201408.html

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 大林 良寛

  E-mail: y-obayashi@yglpc.com

 

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【セミナーのご案内】『企業コンプライアンス入門』

 

  弁護士西田恵、弁護士森田博、弁護士野中啓孝は、NPO法人関西社会人大学院

連合が主催する専門セミナーにて「企業コンプライアンス入門」というテーマ

(4回シリーズ)で、それぞれの担当講座にて講演します。

 詳細は下記のとおりですので、ご案内申し上げます。

 

                 記

 

 【日 時】2014年9月1日、9月8日、9月22日、9月29日

      (いずれも17:00から21:00を予定)

 

 【会 場】キャンパスポート大阪

      (大阪市北区梅田1-2-2-400 大阪駅前第2ビル4階)

 

 【主 催】NPO法人関西社会人大学院連合(TEL 06-6210-3620)

 

  セミナーの詳細及びお申込みは、次のURLをご覧ください。

  http://kansai-seminar.com/courses/view/211

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 野中 啓孝

    TEL:06-6202-4164

    E-mail:h-nonaka@yglpc.com

 

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【YGLPC連続セミナー開催のお知らせ】

 

 当法人において、「YGLPC連続セミナー」を定期的に開催させていただいており

ますが、第3回として、平成26年6月11日に、「クレーム対応の法的留意点と

悪質クレーマーへの実務対応策」をテーマとして、当法人の小坂田成宏弁護士及

び岡筋泰之弁護士がセミナーを開催いたします。

 

上記セミナーの詳細・お申込みついては、以下よりお願いいたします。

お気軽にご参加ください。

https://www.yglpc.com/wp/news/20140114.html

 

<上記セミナーに関するお問い合わせ先>

 弁護士 岡筋 泰之

  TEL:06-6202-3359

  E-mail:h-okasuji@yglpc.com

 

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【交通事故に関する相談予約申請フォームの新設】

 当事務所ホームページ上の、業務内容「交通事故」のページに「交通事故に関

する相談予約申請フォーム」を新設し、交通事故の相談予約を受け付けることと

なりました。

 交通事故に関するご相談の予約をご希望される方は、相談予約申請フォームの

「ご相談のついて」及び「ご相談の流れ」記載事項をよくご覧のうえ、相談予約

申請フォームに必要事項をご入力いただき、ご送信下さいますようお願いいたし

ます。

 

<上記セミナーに関するお問い合わせ先>

 弁護士 鈴木 勝博

  TEL:06-6202-3501

  E-mail:k-suzuki@yglpc.com

 

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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同

・発行日:2014年4月28日発行

 

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