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YGLPCメールマガジン第16号(2013年4月12日発行)

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         弁護士法人淀屋橋・山上合同

 

        ★ YGLPCメールマガジン第16号 ★

 

        〜デリバティブ取引における金融機関の説明義務をめぐる

         2つの最高裁判決について                                     

                                         その他1記事〜

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            今号の目次

           

 1.金融法務 最新判例解説

   デリバティブ取引における金融機関の説明義務をめぐる2つの最高裁判  

   決について

 

  2.書籍のご案内

   『遺言相続の落とし穴』

 

 過去のバックナンバー

 https://www.yglpc.com/wp/mailmag/index.html

 

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【金融法務 最新判例解説】

 デリバティブ取引における金融機関の説明義務をめぐる2つの最高裁判決

について

 

1.はじめに

 

  「デリバティブ取引」とは、為替相場や金利などの将来の変動リスクを管

 理するために、外貨や金利等を一定の価格等で取引する権利や義務を、あら

 かじめ契約する取引をいいます。例えば、金利スワップ取引や通貨オプショ

 ン取引などが、これにあたります。

 

  このようなデリバティブ取引により、損失を被った顧客が、金融機関に対

 して、取引勧誘段階で、説明義務違反があったと主張して、損害賠償を求め

 る訴訟提起又はADRの申立がなされることが少なくありません。

 

  今回ご紹介する2つの最高裁判決は、いずれも、デリバティブ取引の一つ

 である金利スワップ取引に関する訴訟において、金融機関の説明義務違反が

 あるとした原審(福岡高等裁判所)の判決を排斥し、金融機関には説明義務

 違反がないと判断したものとして、実務上意義を有するものです。

 

2.判決の概要

 

(a)最高裁判所平成25年3月 7日第一小法廷判決

(b)最高裁判所平成25年3月26日第三小法廷判決

 

 (1) 事例

 

   本件は、地方の中堅企業((a)の事例では、パチンコ店等を経営する会社、 

  (b)の事例では、足場工事等を業とする会社)が、銀行との間で、デリバテ

  ィブ取引の一つである、円変動金利と円固定金利とを交換する、通称プレ

  ーン・バニラ・金利スワップと呼ばれる金利スワップ契約(以下、「本件金

  利スワップ契約」といいます。)を締結した事例において、当該中堅企業が、

  本件金利スワップ契約を締結した際に、銀行担当者に説明義務違反等があ

  ったと主張して、銀行に対して、不法行為等に基づく損害賠償を求めた事

  案です。

 

 (2) 原審の判断

 

   原審は、銀行担当者は、顧客に対し、契約締結の是非の判断を左右する 

  可能性のある事項((i)中途解約時において必要とされるかもしれない清算

  金の具体的算定方法、(ii)先スタート型とスポットスタート型の利害得失、

  (iii)固定金利の水準が金利上昇のリスクをヘッジする効果の点から妥当

  な範囲にあること)について説明をしておらず、その説明は極めて不十分

  とし、重大な説明義務違反がある、と判断しました。

 

 (3) 最高裁判所の判断

 

   一方、最高裁は、いずれも、本件金利スワップ取引は、将来の金利変動

  の予測が当たるか否かのみによって結果の有利不利が左右されるという基

  本的構造・原理は単純であるとしたうえで、銀行担当者は、顧客に対して、

  本件金利スワップ取引の基本的な仕組みや、契約上設定された変動金利及

  び固定金利について説明するとともに、変動金利が一定の利率を上回らな

  ければ、融資における金利の支払よりも多額の金利を支払うリスクがある

  旨を説明しており、説明義務違反はない、と判断しました。

 

   そして、原審が、契約締結の是非の判断を左右する可能性のある事項と

  して挙げた(i)?(iii)の事項に関しては、そもそも、銀行には、説明義務

  があるとはいえないと判断しました。

 

3.実務への影響

 

  本件の2つの最高裁判決は、今後、金利スワップ契約に関して、金融機関

 の説明義務違反の有無が問題となる事案について、実務への影響が大きいも

 のと思われます。

 

  もっとも、最高裁は、変動金利の借入が多い顧客に対して、金利が上昇し

 た際のリスクヘッジのために、金融機関が、基本的な構造や原理が単純な金

 利スワップ商品を提案し、しかも契約締結にあたって顧客に交付された書面

 には、中途解約には金融機関の承諾が必要であり、中途解約の場合には顧客

 側が清算金を支払う義務があることが明示されていたこと等の事情が認めら

 れる事案について判断を示したものであって、あくまでも「事例判断」であ

 ることに留意すべきです。

 

  したがって、本件とは異なる背景事情が存する事案や、本件とは異なる金

 融商品が問題となる事案についての説明義務違反の有無については、今後の

 判例の集積を待つほかありません。

 

 本判決をふまえて、ご相談等ございましたら、お気軽にお問い合わせくださ

い。

 

<この記事に関するお問い合わせ先>

 弁護士 松本恵理子

 TEL:  06-6202-3364

 E-mail: e-matsumoto@yglpc.com

 

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・発行者:弁護士法人淀屋橋・山上合同

・発行日:2013年4月12日発行

 

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