弁護士法人 淀屋橋・山上合同-YODOYABASHI&YAMAGAMI LPC-
Search>>>
日本語English中文
HOME トピックス研究会企業活動に関する法務市民生活に関する法務Q & A実績・事例リンク集
サイトマップ法人概要報酬規程スタッフ紹介求人情報プライバシーポリシー

Q9: 従業員が私用メールを多くやっているようです。勝手に会社のデータを添付して外部流出させるのではないか心配しています。個人情報保護の観点から規制(モニタリング)しようと思うのですが、何か問題がありますか?また、モニタリングした結果、私用メールがひどい従業員については、懲戒をしようと思うのですが問題が生じますか。
  Q&A > 個人情報保護法
A 9

  従業員のプライバシー等との調整が必要になります。

1 電子メール等について、情報システム担当者(SE)などがモニタリング(監視)する場合、従業員のプライバシー権・及び個人情報保護法第18条との関係の調整が必要となります。
(1)個人情報保護法第18条との関係
 前述のとおり、個人情報を直接本人から取得する場合においては、利用目的の明示が必要となります(18条2項)。モニタリングは、現在一般には、従業員の個人情報を直接取得する場合に該当すると一般には考えられており(私見は一部反対 )、経済産業省ガイドライン及び『雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針(平成16年厚生労働省告示第259号)』(http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/07/tp0701-1.html)によれば、次の事項について、労働組合等と協議し、労働者に通知することが望ましい旨規定されています。
・モニタリングの目的、即ちすなわち取得する個人情報の利用目的をあらかじめ特定し、社内規程に定めるとともに、従業者に明示すること。
•モニタリングの実施に関する責任者とその権限を定めること。
•モニタリングを実施する場合には、あらかじめモニタリングの実施について定めた社内規程案を策定するものとし、事前に社内に徹底すること。
•モニタリングの実施状況については、適正に行われているか監査、又は確認を行うこと。
 なお、私見によれば、かかるモニタリングは、従業員以外の第三者の個人情報も(少なくとも間接的に)収集するものですから、単に社内において明示するに留まらず、当該第三者向けに少なくとも利用目的を「公表」する必要があると考えます(18条1項)。
(2)プライバシー権との関係
 各従業員にプライバシーがあるため、「電子メールの私的使用に期待し得るプライバシー」について「監視の目的、手段および態様等を総合衡量し、監視される側の不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視」の場合は「プライバシー侵害とな」(東京地判平成13年12月3日労判826号76 頁)ります。
 そこで、上述4点について、従業員のプライバシー権との調整の観点から、モニタリングに先立ち労働組合等と協議し、従業員に通知することは、少なくとも要求されるといえるでしょう。
 なお、前述判例は、そのようなモニタリングについて当該従業員の同意がない案件でした(結論としてプライバシー侵害なし)。社内規定をいかに定めても、社内規定が周知しない場合もありますので、前述の4つの点に加え、そもそも従業員から予め私物使用等に関する承諾書を取得し、その中で、電子メール等の私的利用を制限し、モニタリングがあり得ることについて、承諾を得る等の措置があれば、更に安全であると思います。

2 なお、単にモニタリングするに留まらず、私用メールを禁止する規則を設け、モニタリングし、その規則に違反する従業員を懲戒に付すことができるかという点が問題になります。この点、私的利用により会社に具体的な被害が発生していない場合には慎重を要することになります。
 この点、所持品検査(私鉄職員に対する乗車賃の不正取得を摘発する目的での靴の検査)に対する応諾拒絶を理由に解雇した行為が結論的に適法となった事案(最判昭43年8月2日、西日本鉄道事件)において次のように判示されています。
 『従業員組合または当該職場従業員の過半数の同意があるとしても、そのことの故をもって、当然に適法視されうるものではない。問題は、その検査の方法ないし程度であって、所持品検査は、(1)これを必要とする合理的理由に基づいて、(2)一般的に妥当な方法と程度で、(3)しかも制度として画一的に実施されるものでなければならない。そして、』『就業規則その他、(4)明示の根拠に基づいて行われるときは、他にそれに代わるべき措置を取りうる余地が皆無ではないとしても、従業員は、個別的な場合にその方法や程度が妥当を欠く等、特段の事情がないかぎり、検査を受忍すべき義務があり』「具体的場合において、その方法や程度がだとうを欠いたとすべき事情は認められない」として、懲戒解雇を結論的には適法としています。
 かかる判例や、他の懲戒解雇の事案からして、電子メールの私的使用に伴う不正行為(例えば、横領や情報漏洩への加担)が推察されるような場合には、懲戒解雇すら適法となる可能性があります。しかし、電子メールの私的利用そのものは、他の従業員に見えないため、直接的に職場の士気を低下させる等の職場の混乱を惹起するものではないことを十分考慮し、特に、従前私用メールが許される環境にあった職場であれば、仮に形式的に懲戒事由に該当するとしても、懲戒措置、特に懲戒解雇は慎重に検討して下さい。なお、特定の従業員のみに対する電子メールのモニタリングとなる場合は、上記最高裁判例の4要件と比較しても妥当性が低下すると思われます。

印刷




 

(C)2003-2006 YODOYABASHI & YAMAGAMI LPC All rights Reserved.
弁護士法人 淀屋橋・山上合同 
東京/東京都千代田区丸ノ内2-3-2 郵船ビルディング4階 大阪/大阪市中央区北浜3丁目6番13号 日土地淀屋橋ビル