その日、弁護士Zの許を一人の相談者が訪れた。訪れたのは、工作機械販売会社Aの法務担当者aであった。彼の相談内容により以下のことが判明した。[1]Aは、長年大口取引先のBに対して、工作機械を販売していたが、先日、Bが破産してしまい未だに売却代金未回収の状態だという。[2]なお、AとBの間には、長年の取引による信頼関係、また、BがAにとって大口取引先ということから事前に「所有権留保の特約」などの債権回収のための手段をとっていないこと。[3]Bは、破産する以前から取引関係にある第三者Cに工作機械を転売していること。一通りの話を終えた法務担当者aは、「どうしたら良いでしょうか? もし、この代金を回収出来なようなら私どもの会社もBの二の舞になってしまいます。」と、切り出した。弁護士Zは、aに、「落ち着いてもう一度一緒に事案を整理していきましょう。」と優しく語りかけ、事案の整理に入った。「今回、問題となっていることは、・・・(1)「所有権留保の特約」など特別の担保は設定していないのか?(2)Bにおさめた工作機械は、そのままCに転売されているが、まだCからその代金を回収していない。(3)Bは、破産してしまった。 ということですね。これを、1つずつ検討していきましょう。」と弁護士Zは続けた。「まず、(1)についてですが、確かに、所有権留保の特約を締結しておけば、債務者が代金を支払わない場合に、所有権に基づいて目的物を取り戻すことが出来ます。但し、当事者の合意が必要ですから、今回の場合のように大口取引先の相手方に対して特約を結んで下さいとは言い辛いですよね。