自己破産の申し立ての準備には3週間ほど掛かったが、弁護士がいち早くサラ金や商工ローンに介入通知を送ってくれたので、Yさんの許に取立てに訪れた債権者は皆無であった。申立後2週間後に裁判所に出頭して、事情聴取を受け、即日Yさんに対して破産宣告がなされたが、財産はないと判断されて、管財人を選任することも、財産を取り上げられることもなかった。その後約2ヶ月に再び裁判所に出頭した。免責すなわち借金帳消しの裁判を受けるためであった。同じ部屋に40組ほどの破産者と弁護士のペアが入り、集団で事情聴取された。このように大量生産で、年間20万人もの人が破産し、免責を受けているとのこと。「免責後は10年間同じ手段で債務の整理をすることはできません。そのような人を狙って貸し付け、暴力的に回収する違法な金融屋が跋扈しているので、くれぐれも引っかからないように。」という裁判官の説明がYさんの耳に残っている。S先生の事務所にYさんの免責決定が届いたのは、さらに1ヶ月半程後であった。その後1年経過した。Yさんは賃貸マンションに引っ越した。あれだけ、借金の返済に苦しんできたことが嘘のようである。明日の休みには妻子を連れて潮干狩りにでもでかけようかなと考えながら、床に就くのであった。