Yさん元気になられましたね。免責決定が得られて、事務所に挨拶に来られたYさんの顔は、すっかり落ち着きを取り戻していた。S先生は、最所に出会った際の思い詰めた暗い表情を思い浮かべながら、Yさんは必ず、再起すると確信した。Yさんが、弁護士法人淀屋橋合同のS先生と出会うことになったのは、立替金の回収を考えたためであった。Yさんは、不動産仲介会社に勤務していたが、バブル崩壊後の不況の中で、手取り給料が下がる一方であったことから、住宅ローンの分割金や小遣いの不足を補うために、サラ金を利用するようになり、5年以上経過していた。そんなときに、大口の不動産取引の話があった。Yさんは何とか成約にこぎ着けて、まとまった歩合給を得ようと考えた。そして、売り主から依頼されるままに、延滞固定資産税の支払い資金の立て替えをしてしまった。自宅を担保に提供して、商工ローンから借り入れをしてまで。この売主の債権者が、不動産を差し押さえることによって、売買が流れたのは、その直後のことであった。S先生は、Yさんの余りにも思い詰めた様子に、感じることがあった。話し終わったYさんに対して、S先生は断言した。「その金は返ってきませんよ。」と。Yさんは、余りにも突き放した言い方にムッとしたが、知らぬ振りで説明が続いた。「その売主は、不動産を売却して、負債を整理しようとしたものの、債権者の同意が得られなかったのでしょう。そのような経済状態にある人を相手に裁判をして、仮に判決を貰っても、回収の見込みはないのが普通です。それとも、相手には不動産のほかに何か財産はありますか。」と。Yさんは考えていた。そうかも知れない。でも、今月中に商工ローンの分割弁済金を支払わないと、自宅が競売されてしまう。立替金を返して貰う他に、資金調達の方法はないのに。