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実績・事例
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  事例・実績
  不動産取引
 「人でなし」と呼ばれて その 
  
    
  一体どうしたらよいものか・・・。A部長は頭を抱えていた。前任者の後を引き継いで1ヶ月。本来なら、バリバリ仕事を進めたいのだが、この問題がA部長の頭を悩ませていた。
あまり景気のよろしくない世間一般の状況下にあって、A部長の勤めるB社は、ちょっときらりと光る、業界でも現在売り出し中の会社である。従来C市の本拠地としていたC支店が非常に手狭になり近隣でそれに代わる新支店用地を物色していたのであるが、先ほどのA部長の悩みとは、前任者が新支店用地としてやっと見つけた本件物件の問題であった。
本件物件は古い2層の賃貸用木造アパート2棟とその広い敷地であり、入居者は殆どなく、もしその広い敷地を利用できるのであれば、C支店として戦略的にも格好の場所となるものであった。前任者は、社長からもその物件の立地のよさを指摘され、購入対象として検討はしていたのではあるが、いかんせん、入居者がいる状態では購入しても建物を取り壊すこともできず、あきらめざるをえなかった。

ところが、暫くして、前任者はその物件が不動産競売に付されていることを、新聞の競売広告で偶然に見つけ、競売の入札に参加することを社長に相談した。社長は2つ返事で了解したが、しかし、B社にとって、競売の入札に参加することなど全く初めての経験であり、裁判所の競売記録をあらかじめ見たり、専門家に相談しておいたり、というようなことすら、社長はもちろんのこと前任者も全くしていなかった。裁判所の売るものだから大丈夫なんだろう、こういう漠然とした意識がB社内にはあったことは否めない。ところが、実は本件物件には依然として入居者が2世帯残っていたのである。当然ながら、入居者は新所有者たるB社にも賃借権を対抗できるので、B社は計画を進めるには入居者と話し合って賃貸借契約を解消してもらわねばならない。

前任者から引き継いだA部長は、 C支店の開設を任されてから、この事実を知ってあわてた。既にB社は本件物件を落札し、代金納付済みである。後戻りはできない。果たして、入居者と話がつくであろうか。1世帯とは話がついたとの連絡があり、ほっとしたものの、残る1世帯と話し合いができるだろうか。
とにかく挨拶にと、その入居者を訪問したら、「おまえたちは人が住んでいるのに購入して追い出そうとするのか」「それは地上げ屋ではないのか」「人でなし」などといわれた。しかし、自分たちは地上げ屋でも人でなしでも何でもない。その言葉はショックだった。自分たちはB社の心正しい精神に賛同して入社したのだ。自分たちはB社の名を汚すようなことは決してしない。ただ、入居者の言い分も痛いほどわかる。誰だって、現在、居住している場所を簡単には動きたくない。住み慣れていれば余計にそうだろう。

何とか話し合いで解決できないだろうか。そうでないと、新C支店の計画は一向に進まない。まず、入居者の話が進まなければ広い敷地全体が使えない。取壊や建設工事に入ることもできない。また、本件物件を購入した資金の金利負担もあり、賃借物件である現在のC支店の賃料とダブルに支払っている計算になる。何とかしたい。
社長からは役員会で「C支店の進行状況はどうなっているのか、いつ頃目途がつくのか。」と聞かれ、社長も了解したのではないのかという言葉を飲み込みながら、いよいよ板挟み状態となった。
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