「もうええやん、どうでも。」少年は、大きく背伸びをして、にやけながら吐き捨てた。足をブラブラさせながら椅子を傾けて後ろに反り返り、鉄格子のかかった窓を少し開けて外を見た。鑑別所内にある付添人面会室。少年の開けた小さな窓からは、中庭の銀杏の葉が太陽に照らされて、少年の髪の毛と同じ色で弱々しく揺れている。「いや、ええことないやろ。お前まだ15やねんぞ。人生投げるんはまだちょっとまだ早いで。お母さんも心配してしょっちゅう電話してくるで。」少年は「お母さん」という言葉にブラブラさせた足を一瞬だけとめた後、上を向いたまま言う。「おかんは心配してんちゃうって。ポリとか裁判所に腹立てて先生に文句ゆうてるだけやろ。」前回審判からまだ5ヶ月しかたっていない。なんとか保護観察になって家に帰ったかと思えば、原付によるひったくりと自動車窃盗(無論、免許は持ってないし、とる資格もない)が立て続けに判明し、またもや通称「カンベ」(鑑別所)に逆戻りだ。15歳にしては、感心するほど(?)堂々としている。鑑別所ではどんな悪ガキでもベソをかいたり急に反省したりするものだが、彼はいつもにやにやしながら、いつでも面倒くさそうに行動する。当然、鑑別所職員にも、調査官にも、裁判官にも受けが悪い。14歳の頃から、煙草、シンナー、不純異性交遊、万引き、恐喝、深夜徘徊で生活が染められていた。もちろん、彼自身に原因があるのは明白だ。