弁護士法人 淀屋橋・山上合同

コラム

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仮想通貨に関する所得の所得区分 ~譲渡所得か雑所得か~

【執筆者】木村 浩之

1 国税庁の公的見解

 仮想通貨「元年」の確定申告が始まりました。それに先立って、昨年、国税庁からは、平成29年12月1日付けで「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」が公表されています。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf

 これによると、仮想通貨の売却によって生じる利益については、原則として「雑所得」に該当するとされています。

 しかしながら、一般に、資産を「購入」し、その代価より値上りした状態で「売却」して得られる利益は譲渡益(キャピタルゲイン)といい、雑所得ではなく「譲渡所得」に該当するのが通常です。

 雑所得と譲渡所得とではその所得金額の計算方法に違いがあります。一般に、所得金額の計算上、雑所得よりも譲渡所得の方が有利になることが多いといえます。

 また、より大きな違いとして、「損益通算の可否」が挙げられます。すなわち、仮に仮想通貨の売却によって譲渡益ではなく「譲渡損」が生じた場合、これが譲渡所得であれば当該損失を給与所得や事業所得などの他の所得金額から控除することができるのです(所得税法69条1項)。

 そこで、本コラムでは、上記のような国税庁の取扱いの是非について検討してみたいと思います。

2 原則的な所得区分の検討

 まず、所得税法上の雑所得の定義を確認します(下線は筆者。以下同じ。)。

(雑所得)
第35条 雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。

 ここから分かるのは、雑所得とは、ある所得が譲渡所得その他のいずれの所得にも該当しないものをいうということです。

 そこで、仮想通貨の売却から生じる所得が「譲渡所得」に当たるかを検討します。これが譲渡所得に当たれば、雑所得には当たらないことになります。

 所得税法上の譲渡所得の定義は次のとおりです。

(譲渡所得)
第33条 譲渡所得とは、資産の譲渡(…略…)による所得をいう。

 要するに、「資産」の「譲渡」による所得が譲渡所得に該当するとされています。仮想通貨が「資産」に該当し、その売却が「譲渡」に該当すれば、仮想通貨の譲渡から生じる所得は譲渡所得となります。

 ここでいう「資産」とは、「譲渡性のある財産権をすべて含む観念で、動産・不動産はもとより、借地権、無体財産権、許認可によって得た権利や地位などが広くそれに含まれる。」と解されます(金子宏「租税法(第21版)」(有斐閣・2016年)240頁)。

 また、この点、仮想通貨は、資金決済に関する法律によると、次に掲げるものをいうとされています(同法2条5項)。

一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(…略…)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

 したがって、仮想通貨が譲渡性のある財産的価値、つまり「資産」に該当することは明らかであるといえます。

 次に、「譲渡」とは、「有償であると無償であるとを問わず所有権その他の権利の移転を広く含む観念で、売買や交換はもとより、競売、公売、収用、物納、現物出資等がそれに含まれる。」と解されています(金子宏・前掲241頁)。

 したがって、仮想通貨の売却が「譲渡」に当たることも明らかであるといえます。

 以上のことから、仮想通貨の売却から生じる所得については、原則として「譲渡所得」に該当すると考えられます。

3 例外規定についての検討

 以上に対して、所得税法33条2項は次のとおり規定しています。

2 次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一 棚卸資産(…略…)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
二 前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得

 2号は関係ありませんので、1号について検討したいと思います。「棚卸資産の譲渡」または「その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡」のいずれかに該当すれば、譲渡所得から除外されることになります。

 まず、仮想通貨の売却が「棚卸資産の譲渡」に当たるかを検討します。

 この点、「棚卸資産」とは、「事業所得を生ずべき事業に係る商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産(…略…)で棚卸しをすべきもの…略…をいう。」とされています(所得税法2条1項16号)。

 これはすなわち販売目的で所有される資産のことをいいますが、通常、仮想通貨については、株式等と同様に、投資目的で所有されることが一般ですので、「棚卸資産」には該当しないと考えられます。

 次に、仮想通貨の売却が「その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡」に該当するかを検討します。

 このような場合の所得が譲渡所得から除かれるのは、その実質が譲渡所得とは異質であるからといえます。すなわち、譲渡所得の実質は「所有者の意思によらない外部的条件の変化に起因する資産価値の増減」であるのに対して、営利目的の継続的な活動から生じる所得の実質は「所有者の意思による人的努力と活動に起因する資産価値の増減」であるといえるからです。

 そうすると、仮想通貨の売却から生じる所得については、それが意思的な人的努力と活動(言い換えれば、一定の規模と収益性をもって反復継続的になされる経済活動)によって生じたものと認められない限り、譲渡所得からは除外されないと考えられます。

 以上をまとめると、仮想通貨の売却から生じる所得については、原則として譲渡所得に該当し、それが一定の規模と収益性をもって反復継続的になされる売買から生じる場合に、例外として雑所得(その経済活動の規模等によっては事業所得)に該当すると解すべきでしょう。

4 確定申告の留意点

 以上でみたとおり、仮想通貨の売却から生じる所得については、譲渡所得に該当する場合と雑所得に該当する場合があり得ると考えられます。筆者によれば、譲渡所得が原則です。

 もっとも、国税庁の取扱いは雑所得が原則というものです。仮に、この取扱いに従って雑所得として確定申告をした場合、これを後で争うことができるでしょうか。

 このような場合、納税者としては、確定申告が誤っていたとして「更正の請求」をすることが考えられます(国税通則法23条)。この手続において、雑所得ではなく譲渡所得として税額を再計算し、当初の税額との差額について還付を請求します。仮にこれが認められなかったとしても追加の税負担は生じません。

 逆に、譲渡所得として確定申告をした場合、これを雑所得として税務署が更正する可能性があります。この場合、納税者としては、不服申立てをして争うことができますが、加算税や延滞税の負担が生じ、かつ、最終的に不服申立て(及び裁判所に対する訴え)が認められなければ、その負担は確定することになります。

 以上のことからすれば、国税庁の取扱いが公表されている現状においては、いったん雑所得として確定申告をした上で、更正の請求をするという方法がより無難かもしれません。

以 上

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